福島第一原発が爆発した当時、「廃炉計画を示せ」という声がものすごく、それに押されるように東電は計画を示した。何もかもが不透明で流動的で状況も刻一刻と変わっている時期にいい加減なものを出しても、どうせ内容も時期も変わるだろうから、私には必要性が感じられなかった。当時第一にやることは解け落ちた燃料デブリやプール内の核燃料棒を安定して冷やすことだった。案の定、それから幾度となく廃炉計画は変更され、作業内容も廃炉時期も当初とは違うものになっていった。次々と新たな問題が発生し、土を冷却する必要も出るなど何らかの変更や延期は毎年あったのではないだろうか。8年を過ぎた去年でもデブリ取り出し時期についてかなりの延長があったと記憶している。落ち着いてから仮の廃炉計画を出すならわかるが、まだ危険な状況が続いている時に、急いで収束までの作業内容と時期を求めても意味がないだろうし(信じる人にとっては多少の精神安定剤にはなるかもしれないが)、忙しい責任者や担当者たちに無駄な時間を使わせることにしかならない。2,3年たって実態がわかってから、ある程度実現可能な廃炉計画を求めればよい。

 今はコロナ問題で緊急事態宣言が出されている。最近になって血管の内壁を傷つけて脳卒中などを引き起こす事例も複数報告されるなど、未だ新型コロナウイルスの実態もよくわからない。このような時期に、出口戦略を求める声が一気に高まってる。流動的なことや不明なことについてはもっともらしい根拠をつけて適当な出口戦略を示すことはできるだろうが、意味もないし、出したらみんなその通りにやるのだろうか。「人との接触8割減」など、具体的な数字もいくらでも出せるだろうが、出してもやらないだろう。今、専門家コメンテーターやマスコミ、国民がやることは、「数字を出せ」、「出口戦略を示せ」と不満を爆発させることではない。

 まず、やることをやる(人との接触8割減や自粛要請を守る等)。そして、ある程度ウイルスの実態や世界経済の方向などが見えてきた頃に、その時の状況も考慮して多少信頼性のある長期的な取り組みを示せばよい。優先順位というものがある。