新国立競技場を見るたびに、よくこれほど森林を破壊をしたなあと悲しくなってしまう。
物事には長所と短所がある。さらに、残飯が人にとっては汚いものでも豚にとっては豪勢な食事であるように、そもそも長所も短所も、時や場所、利用方法、視点などによって異なってくる。しかし、そこまで厳密に考えると長くなるので、今回は長所と短所の両面があるということのみ考慮する。
設計者は、周囲の自然に調和した競技場、温かみのある競技場をコンセプトにしたという。確かにそのような建物になっていると思う。長所といえば長所かもしれない。しかし、それは多くの木を伐採するという自然破壊の上に成り立っているものだ。個別的・局所的ではなく、全体的・総合的にみれば、「周囲の自然との調和」と「自然保護」のどちらを大切にするかという判断になろう。どうも本末転倒のような気がするし、競技場を作る上で構造的な長所も木材には無い。二酸化炭素が増え、地球温暖化も待った無しの深刻な状況だ。比較すると、自然保護の方に傾くのではないだろうか。
自然保護という世界の流れに逆行したこの巨大建造物は、これから数十年間は自然破壊の象徴として威光を放ち続けることだろう。デザイン決定まで時間が無かったとはいえ、権力だけある素人が好みや感覚で決めるのではなく、もっと多くの多種多様な専門家(政治家や役人、コメンテーターなどではなく、研究者)が集まって様々な観点から検討してほしかった。