IOCのバッハ会長は、どうしてマラソン会場を札幌に決定したのだろうか。開催国である日本の関係者に全く相談なく決定したとは考えにくい。ドーハでのマラソン大会を見て、バッハ氏はたしかに東京での開催を心配に思ったであろう。そのバッハ氏に対し、日本側の誰のどのような言葉や態度が後押となって、バッハ会長に札幌開催を「決心」させたのだろうか。

 バッハ会長は発表の前、大会組織委員会の森喜朗会長と連絡を取り合っていたという。森氏といえば、沖縄サミットでおじさんたちに安室奈美恵の歌を聞かせたり2千円札を作ったりと、いつも「感覚がずれているなあ」と思わせてくれる総理であった。私は、彼が体調不良でオリンピック組織委員会の会長を辞めたと思いこんでいて、これでみんなが協力して東京オリンピックがうまくいくだろうと思っていたら、今も会長をしていたらしい。

「森会長は私を政界に導いてくれた、父みたいな存在」と公言する、過去にセクハラをしていた橋本五輪相は、IOCのコーツ委員長から「先週には北海道出身の五輪相が前向きであることも知った」(共同通信)と暴露されてしまった(なぜここで過去のセクハラ問題を出したかというと、過去を見るとその人の性格や態度、知識や能力がある程度わかるからである)。仮に、大切なお父さんがバッハ会長から受けた札幌への変更相談に難色を示したとしたら、お飾りの娘がそれ(父親の意向)にさからってまで札幌開催に前向きな言動を単独で行うはずはない。

 様々な要素についてよく考えず、結果も想像できず、自分の感覚や思いつきに絶対の自信を持った二人は、いつもずれた方向へ突き進んでしまう。ミスや落ち、失敗が許されない大きな大会のオリンピック運営には、最も不向きなタイプだ。今回の札幌決定は軽くはない。選手や国民に納得してもらうためにも、バッハ会長の札幌決定発言前、森・橋本両氏とバッハ会長の間で交わされた会話を明らかにしてもらいたい。

 今回、都知事を排除して勝手に話を進めた森氏は、「今後ワンチームで!」などと最後の最後までおかしなことをつぶやいていた。彼の言動はもうどうしようもないので、物事にかかわらないだけでも周囲は助かる。お二人には東京オリンピックに首を突っ込むことなく静かにしていてもらいたい。これ以上混乱させられては、時間的に取り返しがつかなくなる。東京オリンピックが本当に失敗してしまう。