先入観を植え付けられていない幼い子どもは、友達が自分と肌の色が違っても、からかったり馬鹿にしたり見下したりすることはない。蛇のことをしらない赤ちゃんが、笑いながら蛇と遊ぶのと同じだ。

 なぜ大人になると、肌の色で人を差別するようになるのだろうか。もちろん学校でもマスコミも人種差別をしろとは言わない。むしろその逆で、人種差別による争いの歴史を学んだり、人種差別によって争いが起きている事実を報道したりして、人種差別をなくそうとする。しかしその願いとは逆に、まったく差別意識のなかった人々に新たな意識を植え付ける。「ああ、あの肌の色の人々は差別される対象なんだなあ」と。これは、同和教育にも言えることである。学校で負の歴史を学ぶということはそういうことだ。同じことを繰り返さないために歴史は大事だというが、学校でずっと歴史を学んできた人々が争いや戦争をやめることは絶対にないことは、これまでや今の世界の状況を見ても明らかだ。歴史は繰り返される。

 人間はロボットと異なり、複雑な能力や感情を持った動物である。言われた通りに思い込み、行動するわけではない。これからの社会を担う純粋な子ども達や差別意識のない人々への現実的な効果を十分に考えてから、教育をしたり報道をしたりしなければならない。