津波の映像を見ながら思い出したことがある。確か5年前も同じようなことをこのブログに書いたと思うので重複するかもしれないが,大事なことなのでもう一度書いておく。

 東日本大震災の時,地震の揺れや建物の崩壊で亡くなった人はほとんどいない。多くは津波で命を落とした。では,なぜ人々は安全な高台や内陸方面に逃げなかったのだろうか。津波が来るまで30分はあったはずだ(最初の震源地に近い石巻で大津波がきたのが地震発生時から約40分後)。それはテレビやラジオで,大きな津波は来ない(予想される津波の高さは2メートルとか3メートルなど)と流したからだ。それを聞いた人は,当然そんなに高い所までは逃げない。私が沿岸地域に住んでいたとしても,そんなに高い所までは逃げなかったと思う。後になって予想される津波の高さはもっと高いものに変更されたが,その時はすでに高台まで逃げられなかっただろうし,異なる情報がいくつも流されて混乱しているうちに津波がきてしまったという人もいるだろう。一度テレビやラジオ等で情報を得た人はいつまでも情報を見る必要はないので,そのまま生活を続けてしまった人もいたと思う。そして実際は15mや20mの大津波がやってきて,多くの人が波にのまれた。

 だから,これは人災である。気象庁が事実とは異なる情報を初めに流したために人々は避難せず,1万人以上の人が命を落とした。気象庁は多くの人を殺すために,わざと嘘を流したのではないことはわかる。しかし,だからといって責任がないとは言えない。なぜなら,自分たちが出す予想に確信が持てなかったら,具体的な数字を言わないような言い方にするとか,空振りしてもいいからすぐに逃げるような言い方をするなど,前もって情報の伝え方を吟味しておくべきだった。この点において,気象庁は能力不足又は怠慢であり,責任がある。大震災後にはいろいろ検討されて,注意報や警報の伝え方が変わったが,何かが起きてからではなく,前もってあらゆることを想定して準備をしておいてもらいたかった。もう一度言うが,多くの人が亡くなったのは津波がきたのでどうしようもなく亡くなってしまったのではない。津波が直接的な原因ではない。これは人災だった。天災なのでしかたがないではすまされない。