広島で起きた土砂災害で,50年連れ添った妻を亡くしたおじいさんが,「雨とかみなりで,避難できる状態ではなかった」と泣きながら話していた。このおじいさんの説明は当然の事であり,十分納得できる話だ。他の助かった人は,当時の雨は尋常ではなかったと話している。この80歳過ぎの老夫婦が,土砂が来るかもしれないと思ったとしても,暗い豪雨の中,外に出て逃げることは無理であった。ではどうすればよかったのだろうか。

 今回の土砂災害で,広島市は市の基準の一部を満たしていたのに避難勧告を出さなかった。どんなに厳しい基準をつくっていたとしても,その基準に基づいて勧告を出すのは人間であり,その人間が「勧告出すの,やーめた!」と思えば,それで終了となる。
 だから,原発の基準をいかに厳しくしても,どこかで人間の判断や手作業(ボタンを押すなどの作業),命令などが必要である以上,あれよあれよと原発の爆発に向かって突き進んでしまうということである。実際,福一原発の爆発では,電源喪失後に電源を必要としない冷却装置を数時間にわたって作業員が手で止めてしまったという事実があった。勘違いか,押すスイッチを間違えたか,指示をする人が何らかの情報を誤解したかわからないが,いずれにせよ人間が関与する以上,失敗は簡単に起きるものであるということを心に留めて事を進めたほうがよい。