東北のある地方で盛大に行われている祭りを見てきた。東京から見ると,いわゆる田舎(いなか)といわれる地域である。その町にある会館のホールでもステージ上でお祭りの踊りなどをやっていた。私がホールの中に入ると,たくさんのお客さんが入っていた。地域のお年寄り夫婦や家族が多かった。見渡すと,多くの男性(50歳以上)が帽子をかぶっていた。外は夏の暑い太陽が照っていたので帽子をかぶっており,そのままホール内に座っていたのだろう。室内では(特に演技や演奏を見る時には),普通帽子を脱ぐものと思っていた私はその光景に驚いた。
 60歳位の夫婦の隣の席が空いていたのでそこに座り,ステージ上での踊りなどを見ていたら,隣から下品な音が聞こえてきた。横に座っている帽子をかぶったおじさんを見ると,手に爪楊枝を持って,音をたてながらずっと歯をいじっていたのである。おじさんが席を立つまでの時間,約30分位ずっとシーハーやっていた。
 翌日観光バスで,ある観光地まで出かけた。乗り場に行くと60歳位の運転手さんがバスの前にいたので,「○○行きのバスはこれでいいですか」と尋ねると,「(発車時刻は)まだまだ,そっちそっち」と怒ったような口調で,待つ場所を指さされた(私には乱暴な口調に聞こえたが,田舎の人の普通の話し方なのかもしれない)。関東のはとバスの運転手さんだったら「です,ます」調で話す。田舎はこれで通用するのだろうと思った。前日のホールで出会ったおじさんの姿と重なって見えた。 
 都会の人は情や思いやりが足りないと言われるが,田舎に住む人(特に50歳~ご老人)のほうが,自分中心で我が強いなあと感じた。テレビや世間では,「田舎」というと見くだされて,馬鹿にされたり笑いの対象にされたりすることが多い。私にはそれがピンとこなかったが,今回の旅でなんとなくわかったような気がした。
 これは,たった1回の東北旅行の感想である。今回会わなかったその他の多くの人々は下品ではなく,マナーを守って生活をし,思いやりもあるのかもしれない。次の旅行では,そのような人々にたくさん会えることを楽しみにしたい。