スペインの高速鉄道が脱線した。制限速度80キロの所を,180キロ近くの速度で走行していたそうだ。その地点には,列車の速度を自動制御する装置があったとのことだが,200キロを越えると自動的にブレーキがかかるように設定されていたので,今回はその装置は作動しなかったらしい。なぜ,その装置の設定が200キロだったのか,よくわからない。鉄道会社は,199キロまではスピードを出しても事故は起きないと考えていたのだろうか。おかしな点が多い事件である。いや,原発事故を起こした日本の一国民である私が,他国の列車脱線事故のような比較的単純な事件について,「おかしな点が多い」などと言っては笑われてしまうだろうか。
 日本では放射線量の高い農産物,加工品,水産物が,国によるいい加減な検査を通過して普通に市場に出回っている。放射線量の高い地域から流れてくる川(首都圏の飲料水),地面に降り注いだセシウムをたっぷり吸い上げて育った果物,高濃度の魚,そして原発近くの畑で造ったコメも今年の秋から市場に出る。スーパーに行くと,普通に宮城県沖のワカメなどが売られている。このワカメは当然信頼できる第三者機関による放射線検査などを行っていない。欧米の国々から,日本の今の現状について「日本では国家によるテロがおこなわれている」と言われているのである。なぜ文明国家の日本において国家によるテロがおこなわれ,それについて日本人はわかっているのに黙っているのか,そのことのほうがはるかにおかしな点であろう。政府(マスコミ)による徹底したプロパガンダによって,誤った「復興支援」という言葉の使い方を全国にいきわたらせ,放射能汚染食品を食べてあげない人は非国民だというような風潮を作り上げた。もともと政治家達は,東北を復興させようなどと真剣には思っていない。政府は,数兆円の復興財源のほとんどを復興とは直接関係のない所に使うことを事実上許したのだから。この数兆円の税金は,今後私たちが数十年にわたって課税されるお金である。それなのに誰も何も文句を言わない。まじめに考えてしまうと,ぞっとするような恐ろしい話だ。外国の人から見たら,すべてが不可解に見えるだろう。
 このようなめちゃくちゃな日本に住んでいる人が,構造的には複雑でない海外の事故について,批判めいたことを言える立場にはないのかもしれない。