去年の福島第一原発事故後,しばらく大量の放射能が関東にも降り注ぎ,葛飾区の水元公園や筑波,横浜,北のほうでは渋川や那須など各地で高い放射能が検出されていた。その数値を知って,持ち家でない人は放射能値の低い地域に引越しをした人もいるだろう。私の記憶では多くの地点で1時間当たり1マイクロシーベルトを超えていたと思う。この数値を聞いてもよくわからない人のために目安を示すと,チェルノブイリの強制避難地域や世界的な安全レベルの値から1時間当たりの放射線量が0.3マイクロシーベルトであれば引っ越しを考えたほうがよく,0.5マイクロシーベルトであればすぐに引越しをしたほうがよいレベルとされている。
 この放射線量の多くはセシウムであり,半減期が30年のものである。したがって当然現在も同じ線量だと思われるのだが,ここの地域が今も危険であるとか,あまり行かないほうがよいといった情報が全く聞こえなくなり,どこでも安全のような扱いになっている。これでいいのだろうか。各自治体のホームページを見ると,放射線量の数値までかなり減っている。どういうことなのだろうか。誰も那須の広大な土地を除染していないし,水元公園やつくば市周辺の沼などもそのままである。誰かが現在の数値を操作しているのか。政治家や都道府県職員,国民などすべての人が,放射能が高い地域はたくさんあるがそれには触れないようにしようという暗黙の了解でもあるのだろうか。
 関東各地からたった1年で高い放射線量がなくなってしまった理由が私にはよくわからないのである。これから数十年間,(高い放射線量を)見ないふりをして何のプラスがあるのだろうか。実態を直視し,改善策を行っていくのが自然であろう。