福島原発事故当時，総理であった菅氏が，原発に緊急で運ぶバッテリーの大きさなど細かいことを聞いたり，周囲の人々にどなったり，他の人物を相談役としておいたり，東電に自ら乗り込んで怒鳴り散らしたりしたことなどが非難されている。はたしてその非難は適切であろうか。
もし物静かでおとなしく，当事者から都合のいい説明を受けても全てうなづくだけの人が総理であったら，日本が終わっていた可能性がはるかに高かったように私は思う。あの時は，福島原発においてバッテリーをはじめとした緊急に必要なものを集約する人も素早く対処できる専門家も指示を出す人もいなかったであろう（実際菅氏の予想通り原発に運ばれたバッテリーは使えなかった）。菅氏の周辺にいた補佐役的な人々も民主党の素人軍団であって菅氏が重要なことを判断させたり指示を出させたりすることを任せられない人々であった。はじめて起こる緊急事態で混とんとした状況の中において，客観的判断ができる学者を総理自らそばに招いて今起きていることを分析してもらったことも単なる身勝手ではなくベストな行動であったと考える（菅総理が個人的に相談した東工大の教授以外のほとんどが原発を守ろうとする御用学者ばかりだった）。情報管理もできず原発を守ることばかりを考えてのらりくらりとしていた東電の態度を変えたのは，菅氏がどなり社長を怯えさせてくれたおかげであろう。あの「怒鳴りの菅氏」だから，あの東電の自己保身の態度を改めさせ，最終的に福島第一原発にある６つの原子炉の崩壊を防ぐことができた。もし違う人が総理だったら、海水を原子炉に注入することもベントを開けることも、もっと遅れていたように思う。その後の大勢の自民党御用学者による「安心安全プルトニウム」の大合唱も菅氏が総理だから最小限に抑えられた。もし原発を推進してきた自民党が政権を握っていたら、国民は真実を伝えられず食品検査も厳しくされることなく、汚染された飲食物を大量に摂取して健康被害がもっと大きくなっていた可能性が高い。原発事故当時，本当に菅氏が総理でよかったと思う。
総理という職にある者は，細かいことに口を出さず全体を見渡しながら総司令官として指示をだし，どなったりせずに冷静に対処していくべきだというのは，その他の条件が当たり前に機能している場合のことである。今回は前提がまるで違った。誰も国民のために適切に行動できないのであれば，命令権のある総理が実際に行動をしていくしかないだろう。