間もなく激動の1年が終わろうとしている。未だ被災地は厳しい状況である。そして東日本全体では,汚染された米や農産物,加工品が何事もなく普通に流通している。6月ごろにあった原発からの地下水や海への放射能流出を防ぐために急がれていた遮へい板で原発周囲を覆うという話や3号機のプール爆発で大量に放出されたストロンチウムの話もタブーとなっている。
 以前,福島原発の堤防を高くする議論もあったがそれも詭弁によって必要なしということになり,もみ消されていた。スピーディを使った事故対応訓練もされていたが,実際の事故ではスピーディは利用されなった。最近出された報告書によると,ここまで原発事故が悪化したのは人間のミスによるものが大きかったとのことである。
 このようなことを見てくると,日本の安全管理において,何が欠けているのか,何が悪いのか,何を変えなければいけないのかがわかってくる。いきつくところ「人間が変わらなければならない」ということである。この自覚のもとに,具体的な対策,法律の制定が急がれるのであるが,残念ながらおえらいさんたちの意識が変わることは100%無い(体裁を繕う程度や短期間の意識の変化はあるだろうが)。大事故も災害も,そして政治家たちによる嘘やごまかし,詭弁も永久に繰り返されることを私は断言する。
 しかし,それでも言わせてほしい。我々人間は謙虚さを忘れ,傲慢さやわがままだけが大きくなってしまった。ソクラテスの言葉「汝自身を知れ」には,神の真似事をするな,度を越すなという意味が込められているが,数千年後の我々こそが,もっともこの言葉を重く受け止めなければいけないのではないだろうか。これまでの継続では悲しい。もちろん後退も困る。来年は,一人一人(特に政治家や研究者,企業人)が謙虚にまじめにこつこつと働き,日本の全国民が少しでも平和で穏やかに過ごせるような年にしてもらいたい。