虚像

　ＳＭＡＰが中国でコンサートを行った。スタンド席のほぼ半数は空席だったとのことである。テレビでコンサートの様子が流れていたが，一番上の客席はほとんど人がいなかった。
　私はＳＭＡＰがあまり好きではない。理由は２つある。１つは，ＳＭＡＰのメンバーが「ＳＭＡＰのメンバーでよかった」とか「ＳＭＡＰってすごいですね」などと，「ＳＭＡＰ」というものを客観的に扱って自らが神格化しようとするからである。姑息で恥ずかしいやり方だ。
　もう1つの理由は，単純にメンバーたちに常識や能力がなく，見ていていやな思いをすることが多いからである。香取氏だけは普通の人のようだが，他のメンバーは一般的な大人が持っているであろうコミュニケーション能力や常識，考え方に欠けているように見える。歌唱力もあの通りだし，ドラマでの芝居も不自然でハラハラのしどおしだ。中居氏の司会の能力はすごいじゃないかというかもしれないが，ＳＰＥＥＤが再結成した時にその理由を他の司会者が聞いたら，すかさずもう一人の司会者であった中居氏が「金がなくなったんだろ！」とニコリともせずに目をむいて話したり，外国の有名歌手がゲストで来た時も失礼なことばかり話していた。さんま氏など本当に面白い人と一緒に出ると，自分がつまらなく仕切るために相手のおもしろさまで殺してしまう。紅白は段取り通りに台詞を言うだけなので，別に誰でもいいだろう。メンバーの何人かが過去に犯罪を犯した時のリーダーの対応も世間知らずの振る舞いだった。中居氏以外でよく歌番組の司会をやっている草なぎ氏は，カメラのほうを見ずカンペを凝視して暗く低い声で読むだけだ。
　私には，ＳＭＡＰのメンバーは普通の人間としての会話のやり取りや発言（アドリブ）ができないし，バラエティーや歌手としての能力も低いし，人気も４，５年前あたりからなくなってきているように見える（木村氏のドラマも最近は低視聴率だ）。彼らの事務所は大きいので現在でもマスコミで大々的に宣伝をしたり，ワイドショーなどでも持ち上げて紹介したりしているが，私には今のＳＭＡＰの姿がマスコミとＳＭＡＰ自身によって無理やり大きくつくりあげられている虚像に思えるのである。
　中国政府がＳＭＡＰをＶＩＰ扱いしたり中国メディアが称賛したりしているのはどう説明するのか！と聞こえてきそうであるが，それは中国で広く人気があるからでもなく（一部の人には人気がある），大物だからでもない。単なる政治的な思惑に利用されているにすぎない。
　私はＳＭＡＰのメンバーがバラエティで話す時も，ドラマで演技する時も，司会者としてゲストと会話をする時も，そして歌をうたう時も，いつも「相手に失礼なことを言いませんように」「変なことを言いませんように」「音が外れないでうまく歌えますように」「演技で緊張したり不自然な動きがありませんように」と祈るような気持ちで見てしまう。そんなに言うなら見なければいいじゃないか！と言われそうだが，実際すでに自分から進んで見ることはもうなくなってしまった。