幼い子どもは夢と現実がはっきりしないのでお化けや霊などを怖がったりするが,大人でも心の底から信じている人は結構いる。信じ切っている人にとってはカーテンのしわ模様でさえお化けの顔に見えるのだろう。
 私は大学生ころまで,性同一性障害という言葉を聞いたことがなかった。30年ほど前から流行として男性が女装したり,女性がかっこいい女性にあこがれ,「ボーイッシュ」などという言葉も生まれた。性転換をした芸能人も50年ほど前から現れるようになり,国民の意識を慢性化させたことも事実だ。ドラマ「金八先生」もこの言葉の一般化に大きく貢献した。このような風土の中で,一喜一憂したり催眠術などにかかりやすいような感情的で思い込みの激しい人や,現状からの逃避を望んでいる逆境に弱い人が,自分は性同一性障害者だというようになってきたのではないだろうか。
 明治や大正,昭和初期に,自分と異なる性に自分もなってみたいという憧れを持つ人やそこに逃げたいと一瞬思ったりする人はいたと思うが,治ることのない性同一性障害の人が日本に一人でもいたのだろうかと疑問に思うのである。