佐賀県知事が,玄海原発の運転を再開すると記者会見で述べた。理由は「安全性について問題がクリアされた」ということだ。人間が設計し製造し操作する機械である以上事故は必ず起きる。安全性についての問題が完全にクリアになることは永遠にない。
 これまでとても高度な機械類がたくさん作られてきた。そして航空機もスペースシャトルも銀行の全国的なシステムも何でも壊れたり人的ミスによって事故が起こったりしてきたが,そうなっても被害は範囲も期間も限定的なものなので,人間が作って利用しても構わなかった。しかし原発だけは話が違う。事故を起こすとかなり広い範囲で数十年にもわたって被害が及ぶ。数万年影響を及ぼす物質も放出される。人は絶対に原発に手を出してはいけないのである。
 海江田大臣は,佐賀県の知事に対し「安全性について国が責任を持つ」と話した。国が責任を持つということは原発で事故が絶対に起きないようにするということではない(そんなことは不可能なことである)。原発で事故が起きた時は,国民から税金をたくさんとって補償をするということにすぎない。国は痛くもかゆくもない。佐賀県では,国による安全説明(安全な部分だけの説明)を聞いたりしておかしいなあと思っていたが,ようやく茶番劇が完結したようだ。佐賀県の知事には,原発事故が起きるとどうなるか,1カ月ほど福島に住んでみてもらいたい。原発をやめると地元の町や村の経済が衰退するという話をするが,その地元はなくなり県全体も大きな被害を受けてしまうのである。
 原発事故の可能性がかなり低いなら知事の主張も少しはわかるが,我が国は地震大国で断層だらけであるし,海溝型の巨大地震も近いうちに必ず来るという。日本のどこかの原発では小さな事故が時々発生している,定期点検で止めようとすればうまく止まらない,点検をすればパイプに亀裂が見つかる,非常用発電機からはオイルが噴き出るというのが実態である。再び原発事故が起きる可能性はむしろ高いといったほうがよい。