千葉で,国の規制値を超えた放射性物質が検出されて出荷の制限対象となっている香取市のほうれん草を、制限期間中の4月1~22日に農家が青果市場に7885束出荷したとのことだ。
 テレビの司会者やコメンテーター,大学教員,そして国民が,「市場に出ている飲食物は安心なんだ!みんなで食べよう!」と叫ぶような茶番劇は,もう終わりにしようではないか。
 
 このようにいうと,必ず「それこそ風評被害をもたらす」と文句を言ってくるだろう。しかし,その指摘は適切ではない。水素爆発後の数日間で大量の放射能が南東北や関東一円に降り注いだ。すべてのほうれん草ではないにしても,多数の中に規制値越えの放射能が入ったほうれん草がある程度(ほとんどかもしれない)含まれている以上,そのすべてを出荷禁止にすることは自然のことである。これまでも工場でお菓子やパンに異物が入った場合,すべてを回収してきたではないか。自動車のリコールにしてもそうである。
 自分の健康をある程度害してまで,千葉県産や茨城県産の野菜や牛乳,牛や豚の肉を食べて農家の人々を助けたいという気持ちは素晴らしいのかもしれないが,全ての人間の人生や家族,子孫のことなどを考慮して判断すると,一部の人の生活を助けるためには何でもやったほうがよいということでもない。もしそうなら,困っている浮浪者にもお金を渡したほうがよいことになる。助け方も重要であろう。

 今回の戦いは数十年にも及ぶ長いものになる。今後は根拠のない感情的な茶番劇で乗り切ろうとするのではなく,われわれ国民は正確な情報を求め,それにきちんと対処して生活していくことが大切であろう。あわせて,農家の人々にも不特定多数の国民に将来健康に害を及ぼす可能性のあるものを意図的に与えようとするテロのような行為は慎んでもらいたいものである。福島県の児童を差別した児童がいた千葉県の長である知事は,国の放射能規制値を超えていることを知って市場に野菜を出していた農家について,「気持ちはわかる」と話した。手本となる長がこれだから,子どもたちもゆがんだ考えを持つようになるのではないだろうか。