「水清ければ魚棲まず」ということわざがあるが、その反意語として「水清ければ月宿る」というものもある。
ことわざは、自分の考えや理屈が正しいと相手に思わせたい時によく引用されるが、あまり意味のないことである。ことわざには相対する意味のものがけっこうあり、自分の言いたいことにあわせて好きなほうのことわざを選ぶだけなのだから。
また、「やまない雨はない」「明けない夜はない」など、仕事や人生で行き詰っている時なども、自分の今の心境に合ったことわざを当てはめて、ほっとしてみたり自己満足したりもする。しかし、これらにも正反対の意味のことわざも存在するので、自分の選んだことわざが適切で、今後その通りになっていくというわけでもない。
ことわざを引用しても正しさや適切性を示す根拠にはならず、せいぜい暗示程度(相手に自分の意見が正しいと思い込ませたり自分で安心したりする程度)の効果しかないのだろう。
ことわざは、悩みを取り除く際に役に立つ場合もあるだろうが、議論の際に用いてしまうと、話し合いが正誤や適切性とは関係なく、「口げんかに勝つ(わるい結論になっても相手を説得できればよい)」という目的になってしまうので注意が必要であろう。