子育てはほめることが大切だということが常識となっている。ほめられるとうれしくてまたやったりもっと頑張ったりするということなのだろう。それは子どもだけではなく、大人もそうなのかもしれない。

 話のこしを折るようで申し訳ないのであるが、実は私はほめたりほめられたりすることが大嫌いなのである。私はほめてもらうためにやったことは1つもないし、私をほめる人に対して「あなたは誰なんだ?じゃまだから、私の努力や目的の前に立たないでくれ!」と思うのである。また、陸上短距離走などで応援を受け、その応援が力となったと話している選手を見ると、「おまえは声援を聞いてさらに力が出たのか、はじめから全力でやれ!手を抜くな!」と思うのである。もちろん私は声援などには関係なく、はじめから自分の力を120%出して走り抜けてきた。

 なぜこのようなことを書くのかというと、書店でほめ言葉は危険であるといった内容の子育ての本を目にしたからである。私はほめることをことさらに大きく取り上げることに反対であったが、書物でそのようなことが書かれてあるものをみたのは初めてで、とてもうれしくなったのである。
 その本によると、ずるくて怠け者の幼稚園児が、いつもほめてくれる先生がこちらを見ていることに気づき、良いこと(忘れたが、例えばごみを拾うといったようなこと)をしたあとにその先生に近づいて「僕っていい子?」と聞いてきたそうである。
 小学校パターンでいうと、いつも自分を褒めてくれる先生の前ではいい子ぶるが地域のおじさんが注意をすると逆切れして口ごたえをしたり、あるいはとにかく子どもを褒めまくる担任から普通の担任に代わると、急に何もしなくなったり態度が悪くなったりする(これはつまりたくさんほめてもその子が育ってはいなかったということなのであるが)ということだろうか。

 まったくほめるなということではないが、ちょっとしたことでほめたり、日常的にほめたり、あるいはほめて育てるといったようなことでは、爆発的に頑張る力や努力を続ける力、真剣さ、正義感、奉仕の心などが本当の意味では身につかない。弱くてずるがしこい子どもになってしまうであろう。
 教育の話なので個別の例外も多々あるだろうが、傾向としてはさほど的外れなことでもあるまい。