知り合いに、ある場所に車で行く道を尋ねた。
 その人は、まず「ここからまっすぐ行くと、○○という名前の交差点があるでしょ。そこをまっすぐ行って・・・」といい始めた。ここからどちらの方向にまっすぐ行くのかわからないし、○○という名前の交差点は、私は知らなかった。「その交差点は、ここからどのくらい離れているの?」と聞くと、「ほら、有名な交差点があるでしょ。○○という交差点。あるじゃない、大きな交差点があるでしょ。誰でも知ってる交差点、大きな○○交差点だよ…」と、何度も有名で大きな交差店であることを繰り返したが、残念ながら私は知らなかった。どちらの方向に車で何分くらい行くと、どんな目印がある交差点なのかだけを教えてもらえればよかったのだが、どうしても無理だった。
 その交差点はまっすぐ行くということはわかったので、とにかくずっとまっすぐ行ったらどうするのか聞いたら、地元の銀行があるのでそこを右に曲がればいいということだった。「よし、わかった!」と思ったら、その後にその人は「銀行の周辺にはお店がたくさんあって、みんなそこに買い物に行くような所で、大きな建物がたくさんあってそこを曲がるの!曲がると急で狭い坂があるから…」と、そのあたりの説明を始めた。え~、大きな建物って10階建てくらい?、たくさんって新宿のような感じ?銀行は交差点に接しているの?曲がった後は狭くて急だというのは、車はすれ違えないの?急って怖いくらい急な道?と、詳しく説明を聞けば聞くほど、疑問点がどんどん増えていって、わからなくなった。○○銀行のところを右折して、ずっとまっすぐいけばよいとだけ聞きたかった。
 説明者と私の、大きさや多さ、狭い道、急な坂の基準が経験によって異なるので、どのくらい?とか何軒くらい?と、その後の会話が長くくどく、疲れるものになった。それでも、説明者のイメージをそのまま共有することはできない。説明者のイメージとは異なるイメージをこちらが作り上げてしまい、それがどんどん増えて、実際に行った時に、「ここは違う!」と思ってしまう可能性が高くなってしまう。ただ長く説明すればわかるというわけではない。それに、わからないことを繰り返されても、わかるようにはならない。
 説明上手になりたいものである。