テレビを見ていると、お笑いの人やくだけた番組の司会者などが、体の欠点(ここでの「欠点」というのは、一般と比較して少し異なる点という意味で、「欠点」という言葉を使っています)を取り上げて、自分のことを笑ったり相手のことを笑ったりすることがよくある。例えば、「だんだん頭が薄くなってきた!」といいながら自分も笑うし、そして、それを見ているお客さんも笑う。手足と体のバランスが一般的でない人は、自分でそれを取り上げて笑いの種にするし、それを聞いているお客さんも笑う。
 欠点を自分でいやだと感じている人もたくさんいる。一方で笑いの対象としている世界があるから、自分も笑われるという思いがさらに大きくなる。日本には、体の欠点をあえて笑いにしたり、それを見て笑ったりする習慣がある。冷静に考えると、欠点をみんなで笑い合うということは、ちょっと不思議でもある。この笑いが無くなれば、数十年後には、欠点をコンプレックスと感じている人たちが、そのように感じなくなる可能性もでてくる。欠点を見て多くのお客さんが笑うという、この不思議な笑いの構造について考えている。