ヒステリックに騒ぐのは、世間を知らない家庭にいる母親だけだと思っていた。会社などで働いている父親は、ある程度冷静に現状を分析・判断できるものと思っていた。しかし、中学2年の生徒が自殺した事件で、保護者説明会後に「私達は真実を知りたいんですよ~。」と叫びにも似た声で、インタビューに答えている父親がいた。がっかりした。私の予想では、会社員ではないと思うが(自営業など)。会社などの組織で働いている父親は現状認識ができ、建設的・論理的に考えるので、話が通じると思っている。
 担任が、子ども同士の会話ややり取り、正確な人間関係を全部把握しているわけではない。むしろ教師に知られたくないような意地悪や悪口、けんかなどは、当然教師がわからない所でやるし、ひそひそ話もたくさんあるだろう。どこの世界でもそれが普通である。警官の目の前で暴力を振るう人はいない。今回の自殺でも、教師より学級の子ども達のほうがわかっているだろう。しかし、動揺している子ども達から正確に聞き取り調査を行うには、かなりの時間を要するし教員では限界もある。現時点では情報はほとんどなく、テレビなどで公になっている遺書だけがわかっていることといっても過言ではないだろう(経験と上記の理由から)。それなのに、父親が、「学校は隠さないで正直に言ってほしい」「テレビで言っていることだけじゃないか」などと叫ぶのは、的外れな指摘である。学校としては、いくら聞かれても現時点ではわからないだろう。でもそのように言うと、親たちが怒鳴ってくるので、あやふやな言い方でも答えざるを得ない。その答えに何の意味があろう。断定した言い方や結論を言うことは、隠しているのではなく、本当にできないのである。現時点でどうしても結論を求めよう(早く責任を学校に確定したい)とする親たちの態度を見ていると、他の目的(確実に取れるところから大金を取るなど)があるのですかと疑ってしまう。大切なことは、真実を把握し、あらためるところを「全て」洗い出し、現実的にすばやく実行に移していくことだ。そうしないと、悲劇は繰り返される。
 今でも、会社や団体、公務員など、組織の中で働いている父親達は、きちんと物事を考えていける人たちだと思っている。そういう人たちも黙っていないで声を出してほしい。