今年のバレンタインデー、彼女はチョコを用意してくれていた。


バレンタインデー当日は平日でお互い仕事だったので、その週末17日土曜日のデートの時に渡してくれた。


ドゥルミアンというブランドの高級チョコに、手書きのメッセージカードも添えてくれて…


2人が今のような関係になって初めてのイベントはクリスマスだったけど、もちろん一緒に過ごすことなんかなかったし、別の日にお互いプレゼントを用意してディナー…みたいな事も特になかった。


そもそも、不倫カップルである以上、各イベントごとが普通のカップルと同じように過ぎてゆく事なんてないってことくらい、僕は最初からわきまえていたから…


だからバレンタインデーに関しても、本当に何も期待していなかった。


「期待してなかっただけに嬉しいよ。ありがとう。」


そう告げる僕に彼女は、


「期待してなかったって…私をなんだと思ってるん?…笑」


そう言って笑っていた。


そのあとはついつい僕も照れもあって、


「ったく、フツーの彼女みたいなマネしてくれやがって…笑」


と、茶化してしまったけど、僕が喜んでいることは、彼女も分かってくれていたと思う。


何故ならその時、彼女も嬉しそうに微笑んでくれていたから…


「Happy Valentine」


彼女と別れて乗り込んだ終電の車内…僕は1人、幸せな気分だった。