初めて彼女を抱いた夜、2人抱き合ったまま眠りに落ちていった。


このまま余韻を噛み締めながら、2人朝を迎えるものだと思っていた…


しかし、ここで僕は不倫であるが故の現実を突きつけられる事となる。


明け方、まだ暗い時間に目を覚ました僕は、隣にある筈の彼女の温もりがそこにない事に気付き、ベッドから身を起こす…


すると、ソファに座り身支度を整えている彼女の姿が目に入った。


僕が目を覚ました事に気付いた彼女は手を止め、その口を開く。


「あ、起こしちゃった?さすがに朝帰りはやばい…旦那が眠ってるうちに帰らなきゃ…れいじくん、眠かったら朝まで寝ててもいいよ…」


さすがにラブホに1人で居ても仕方がないので、僕も彼女と一緒にホテルを出る事にした。


2人でホテルを出て、彼女が配車アプリで呼んでいたタクシーに乗り込み、彼女の家の方向へと走り出す。


自宅マンション前に到着すると彼女は、


「今日はありがとう…気をつけて帰ってね。じゃあ、またね。」


そう言い残しタクシーを降り、僕に向かって名残り惜しそうに小さく手を振ると、マンションのエントランスへと消えていった…


そのままタクシーは僕の家の方向へと走り出す…


さっきまで真っ暗だった空は少しずつ白み始めていた…


そう、これが現実…帰る場所がある人を愛する上での、宿命…


愛し合ったあとにそのまま朝まで一緒に過ごす…


過去に経験してきた恋愛においては当たり前だった事すら許されない…


それは、僕が最初に直面した「不倫であるが故の現実」だった。