同年4月5日に発表した 『無限軌道』 に引き続いての

チューリップ通算6作目のオリジナル・アルバム。

 

およそレコードジャケットらしからぬ、

でも 強烈なインパクトを与えたデザインだと思います。

 

白いお皿の中央に赤の梅干しは、

きっと国旗をあらわしているのだな、と思います。

 

シングルAB面の曲の収録は無しの

全11曲の収録です。

 

アルバム全体の雰囲気として

職人くささというか、いぶし銀のような、印象をもたらす作品群です。

 

A面

せめて最終電車まで         

ぼくのお話                        わし / 僕

木馬                                僕

タイピスト                         

あいつのどこがいいんだ     

あのバスを停めて!           僕

B面

あこがれ・花の東京            

届かぬ夢                          僕

都会                                 僕

そんなとき君がいれば         僕

甲子園                              僕

 

 

…うち4曲が、たった4曲とも言えますが、

「 俺 」が主人公の歌になっています。

 

たったそれだけのことではあるのですが

作風の幅を拡げる効果が

十分に働いていると思います。

 

それまでのチューリップの印象・カラー・らしさというと、

シングル「夏色のおもいで」(詞はなんと松本隆大先生!しかも松本氏の記念すべき作詞家デビュー作です) に出てくるような「ぼく」のイメージが強かった、

そう認知されていたのではないかと思います。

 

自分のことを「僕」というか「俺」というかは

結構な違いを孕んでいると思うんです。

 

どちらでもいい、たいしたことじゃない、

…とも言えそうですが…

意味があると思うのです。

 

 

 

作詞:上田雅利 作曲:吉田彰 のリズム隊による楽曲「タイピスト」

上田さんの迫力あるボーカルが気持ちいいこの曲が好きです。

 

 

楽屋の中の古い机 や

駅前の赤い電話 や

街角の青いポスト → 全国に35箇所しかない速達専用のポストを指しています

… を主人公にして、人々をあたたかく見つめた

財津さん作品「ぼくのお話」

 

安部さんの作詞&姫野さん作曲による「木馬」

 

この2曲は擬人的童話作品。

親しみやすいメロディで

優しさが滲み出てくる佳曲です。

 

 

作詞:安部俊幸 作曲:姫野達也

45周年ライブ “ it remembers ” でも披露され

会場がノリノリに盛り上がった

「あのバスを停めて!」

 

上京した若者の悲哀を自虐的に歌った

「あこがれ・花の東京」

 

「あこがれ・花の東京」に続く

「届かぬ夢」「都会」 の2曲の

胸に重しが乗りかかってしまう悲しみ。

 

「都会」における

財津さんの絞り出すようなボーカルは

最大の聴きどころです。

 

 

最後に収録された

チューリップ5人による共作、

演奏時間10分を越える組曲

「甲子園」。

初出場を決めた主人公の高揚と

待ち受ける悲運が歌われています。

演奏の最後には

この曲、このアルバムをなぞらえるように

「君が代」で締めくくられ

胸にドスンと重みが刻まれ

とても印象的です。

 

この「甲子園」のように

このアルバムは全体的に物語性に溢れた

詩の世界が展開されていると思います。

 

 

 

※前回はアルバム『 Jack is a boy 』について触れました。

なんだか、まるで違うバンドについて書いているような気分です。

財津さん以外メンバーが違うというのも影響しているとは思いますが。。。

年齢的には若かった

この頃の財津さんのほうが、熟成・成熟している感じです。

 

 

 

 

 

 

 

財津さんの快復、復活を心より祈っています。