チューリップ14枚目のシングル・レコード。

 

前年の1977年8月5日発表のオリジナルアルバム『 WELCOME TO MY HOUSE 』と

 

1978年9月5日発表のオリジナルアルバム『 Upside-down 』の間に

Upside-Down Upside-Down
2,057円
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この「 夕陽を追いかけて 」は発表されました。

 

僕がチューリップをリアルタイムで聴き始めたのはいわゆる第2期以降です。

なので発売当時のことは知る由もないのですが、

異質な印象を与える作品だったのではないかと推測します。

 

シングルカットした「 WELCOME TO MY HOUSE 」(この曲は英語詞で野心的かと思いますが)

や、その前の「ブルースカイ」や「風のメロディ」のように、もしくはもっと遡って「青春の影」以降は、ずっとシングルではどちらかと言うとメロディアスな作品が続いていました。

 

ともすると淡々とした印象を与え独白するかのような旋律に、

財津作品では珍しい部類に入る私小説的世界観の詩が載せられ、

延々と歌われて行きます。

そして、抑えていた感情を最後にはふり絞るように発露させ、感動的に歌い上げて行きます。

 

私小説的世界観と言いましたが、

例えば、デビューアルバム『魔法の黄色い靴』に収められた

魔法の黄色い靴 魔法の黄色い靴
1,888円
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「私の小さな人生」では、

♪できることなら 死んでいくその時まで

歌を歌って生きて 行きたい

 

『 WELCOME TO MY GOUSE 』の最後に収められた

「人生の始まり」では、

♪長いこの人生に 

何もできないこの僕だから

できることならば 命尽きるその日まで

声を限りに 歌い続けよう

たった一つの 僕の道だから

 

…と財津さんは歌っています。

この2曲は、

青年財津和夫の個人的な思い、決意、が綴られている点で

私小説的であると思います。

 

「 夕陽を追いかけて 」は、

財津さん個人の経験・思いをベースとしながらも

財津和夫個人的なところから

より普遍的なところにまで昇華され

より多くの人に聴いてもらう狙いがあるシングル作品として

成功していると思います。

 

この曲を耳にする、聴く人の多くが触発され抱くであろう哀愁、

故郷や両親への思いにきちんと寄り添っていると思います。

 

変わりゆく故郷の情景、老いていく両親への思い、生きていく自分…

 

感傷に負けてしまわないように、

挫けることを良しとせず頑なに拒むように… …自分の道を歩む姿

根性物語だと思います。

 

 

♪ いつだって 真剣に 

僕は生きて 来たはずだけど

でも いつも そこには 

孤独だけが 残されていた

 

沈む夕陽は止められないけど 

それでも僕は 追いかけてゆく

沈む夕陽を追いかけて 

死ぬまで僕は 追いかけてゆく

…と、悲しみ・虚しさ・はかなさを振り切るために最後に幾度となく繰り返していきます。


 

 

この曲はレコーディングされたシングルヴァージョンよりも

ライブで演奏されたものにこそ

ぐっと涙腺を刺激する聴きごたえがあります。

きっと顔をくしゃくしゃにして、

そして、最後には声を力の限りふり絞る・張り上げる

若き日の頑固な青年財津さんに触れられます。

このライヴアルバムに収録されている「夕陽を追いかけて」はMCも含め名演だと思います。

 

 

発表当時のライブや、1989年解散当時のツアーでの久々の再演、97年の再結成時、

そして45thに入る前のソロコンサートでも披露されていました。

 

 

 

この曲は地味ながらも知る人ぞ知る!で

実は、実際、多くの人に共感され支持されている…と思います。

 

というのも、YouTube を訪ねると、

いろいろな人がイメージ動画を作成していたり、

カヴァーに挑戦している動画を上げていたりすることが確認できるからです。

 

 

さすがの財津和夫です。見事という他ありません。

素晴らしいことだと思います。

 

 

 

 

 

 

財津さんの快復、復活を心より祈っています。