新年あけましておめでとうございます。
相変わらず不定期なうえに、しょーもない文章力のブログですが、今年もよろしくお願いいたします。
さて、昨年の年末に興味深い記事が各方面から出されました。
それは、防衛省が、海上自衛隊の「護衛艦いずも」に空母化へ向けた改修を行うことを検討している。というものです。
護衛艦いずも
くわえて空母に改修したいずもに搭載する艦載機として、F-35B型の導入も検討しているという話。
F-35B型(垂直離着陸が可能なタイプ)
海上自衛隊の「護衛艦いずも」は、全長248m、幅38mの広大な甲板を持ち、対潜哨戒ヘリコプターSH60Kを5機同時に離発着させられる能力も持つ、海上自衛隊で最大の護衛艦であり、ヘリコプターの運用を前提に作られたヘリ空母として誕生しました。
しかし、いずもは旧日本海軍が運用していた正規空母「飛龍」を全長・排水量ともに上回っており、就役した当時から、F-35B型の運用も可能なのではないかと、まことしやかにささやかれていました。
空母「飛龍」
しかし、護衛艦いずもは、あくまでもヘリコプターの運用のために作られた護衛艦であり、固定翼機を運用するためには作られていないため、そのままではF-35B型を運用をすることは困難である。
今回のいずも改修計画は、近年海洋進出と、尖閣諸島奪取を目論む中国をけん制する意味合いがあることは間違いない。
日本が固定翼機を運用できる船舶を持っているということは、中国からしてみれば、離島周辺に日本の空母があるだけで、制空権を抑えられ、離島に上陸しても空母艦載機からの攻撃を受ける可能性があるため、日本の離島を占領することが、より一層困難になるということである。
日本の空母保有という計画は、離島を奪取せんとする中国にむけた日本の離島防衛に対する強い意思表示であるとともに、強い抑止力にもつながるのである。
では、今回のいずも改修計画が順調に進んだとして、護衛艦いずもはどのように改修されるのか?
今後、自衛隊は何を計画しているのか?ということを、今ある事実に基づいて考察していきたいとおもう。
護衛艦いずもでF-35B型を本格的に運用するためには、いずも自体の改修にとどまらず、必用な改修がいくつもある。
① 飛行甲板を耐熱素材へ改修
② スキージャンプ台の搭載
③ 固定翼機への武器搭載能力の付与
④ 固定翼機への燃料搭載能力の付与
⑤ 固定翼機を船舶で運用するための人員の教育
⑥ 航空自衛隊と海上自衛隊の統合運用
⑦ 格納庫の拡張
思いつくだけでも、最低これだけの能力向上がなされなければ、本格的な空母の運用などできないといえる。
特に⑤⑥は、いずもを改修したからといって済む話ではない。
⑦に関してはほぼ不可能な事案である。
では、⑦を除く①~⑥までを達成することははたして可能なのか?
①飛行甲板の耐熱素材への変更
これは、最も早期に達成可能な改修といえよう。
現時点で、いずも型護衛艦及びひゅうが型護衛艦の甲板は、オスプレイの排熱に耐えられる程度の耐熱強度があることが分かっている。
ただ、F-35B型のジェットエンジンの排熱に耐えられるほどの耐熱強度があるかは不明である。
だが、耐熱素材を含んだ塗料の塗布など、大規模な改修を伴わずに達成可能な項目であるといえる。
②スキージャンプ台の搭載
これは大規模改修が必要な事案である。
F-35B型は垂直離着陸が可能な戦闘機であるが、燃料と兵装を満載した状態では重すぎて垂直離陸は不可能である。
燃料と兵装を満載して飛び立つ際は、長い滑走距離を使って飛び立つか、スキージャンプ台を用いて飛び立つ方法が用いられる。
スキージャンプ台を搭載しているスペイン海軍の強襲揚陸艦「ファンカルロス1世」
スキージャンプ台を搭載している英国海軍の空母「クイーンエリザベス」
ただし、いずもは船首下部にバルバスバウ型の対潜ソナーを携えており、船首方向にさらにスキージャンプ台を増設すると、船首方向の重量が過多になってしまうのではないかという懸念がある。
また船首には近接防空火器のCIWSがあり、スキージャンプ台を搭載しない場合でも、CIWSの位置は現在の位置から別の場所に移さなくてはならなくなるだろう。
ちなみに米国のワスプ級はF-35B型の運用を行っているが、スキージャンプ台は搭載していない。
ワスプ級強襲揚陸艦(全長257m)
いずもも、248mの甲板を最大限に使用すればスキージャンプ台なしでも、F-35B型の離陸は行えるかもしれない。
③ 固定翼機への武器搭載能力の付与
④ 固定翼機への燃料搭載能力の付与
現時点で、いずもにおける回転翼機への燃料搭載能力や兵器搭載能力がどの程度あるのか?
また、兵装庫の大きさや、燃料タンクの規模などが全く不明であるため、これはどの程度の改修が必要なのかが推測できない。
ただ、ヘリコプターに搭載する燃料、兵装と、戦闘機に搭載する燃料、兵装とでは規模が全く異なるため、現時点での回転翼機用の規模の装備では、戦闘機には対応できないと考えられる。
現時点での格納庫サイズを広げることはまずできないと考えられることから、F-35B型に供給できる燃料や兵装の量は極めて限定的な規模にとどまるであろう。
F-35戦闘機は、多彩な兵器を搭載できる。
⑤⑥のまえに⑦の話をする
⑦格納庫の拡張
これはまず不可能である。
船体の設計段階から見直す必要があり、改修でどうにかなる話ではないからだ。
いずも型護衛艦の格納庫は、第一格納庫・第二格納庫、後部の航空整備庫まで入れると、全長125m、幅21mの広さがある。
ここにF-35B型をいれるとどんな感じになるのか?
こうして適当にざっと並べただけでも、格納庫内に11機は収まってしまう。
もっとぎゅうぎゅうに詰めれば13~14機はいけそうだが・・
しかし、格納できればそれでいいという話ではない。
仮にぎゅうぎゅうに幅寄せして14機程度を格納したとして、今度は本来の対潜哨戒任務に必要なヘリコプターの収納スペースがなくなる。
対潜哨戒任務及び、救難任務などに必要なヘリは最低でも3機以上はいるし、MCH101などの輸送ヘリも搭載していなくてはならない。
このほかにも、先ほども言ったように兵装をおくスペースや、戦闘機のエンジンを換装・整備するスペースも必要になってくる。
そう考えると、本来のヘリコプター搭載機数を維持しつつ、戦闘機の格納・整備もするとなると、この規模の格納庫に置いておけるF-35B型の数は5~6機が限度ではないだろうか?
この戦闘機の搭載機数では、1個編隊の運用しかできない。
効率的に航空機を運用しようとすれば、予備機を含め、2~3個編隊計15機程度が理想であると考えられる。
ヘリなどの搭載スペースを削れば無理やり15機を収めることは不可能ではないかもしれないが、運用上全く現実的ではない。
そうなると、いずも型護衛艦をいくら改修したところで、本格的な空母としての運用ができるわけではないことがわかる。
結局いずもは、いい意味でも悪い意味でも、ヘリコプター運用に特化した空母型護衛艦であり、それ以上でもそれ以下でもないのだ。
では、戦闘機を1個編隊しか運用できない中途半端な空母化への改修に何の意味があるのかと思われるかもしれないが、筆者はこれにはもっと先への野望があると考えている。
ここから先ほどの⑤⑥につながってくるのであるが、
自衛隊は近い将来、本格的な強襲揚陸艦の導入・運用を始める可能性がある。
防衛省が数年前に公開した、将来の強襲揚陸艦導入に向けたプレスリリース
(強襲揚陸艦というと、野党や左翼の方々にいちゃもんつけられるだろうから、おそらく「大規模輸送型護衛艦」的な名前で導入されると思う。)
2014年には小野寺五典防衛相が米海軍サンデイゴ基地を訪れ、米国海軍の強襲揚陸艦「マキン・アイランド」を視察し、離島奪回作戦で使う新型艦の導入を本格的に検討する意向を明らかにしている。
USS マキンアイランド (ワスプ級の発展版ともいえる)
おそらくこの強襲揚陸艦おっと、「輸送艦」は、「おおすみ型輸送艦」と「いずも型護衛艦」をミックスしたようなものになると予想され、LCACやAAV7が発進可能なウェルドックを装備し、かつ航空機も同時に運用できるような大規模な格納庫と飛行甲板を有するものと思われる。
端的に言えば、米国海軍のワスプ級やアメリカ級揚陸艦に近似したものになる可能性が高い。
先ほどの話に戻るが、
いずも型護衛艦の空母への改修というのは、最終的にはこの「揚陸艦導入後の運用のための人員の教育とノウハウの蓄積」のために行うところが大きいと筆者は考えている。
また、「いずも」の改修が終わった時期に都合よくF-35B型が手に入っているかどうかもわからない。
防衛省は、はなから改修した「いずも」で戦闘機を本格運用する気はなく、まずは岩国に配備されている米国のF-35B型と改修いずもで共同訓練を実施し、船舶における戦闘機の運用、指揮、格納等のノウハウを積むことを目標にしていると考えられる。
その程度であれば、数多くのF-35B型をいずもに格納する必要はなく、日本向けのF-35B型の導入を急がなくてもよい。
しかも、米国所属であれ、F-35B型が海上自衛隊のいずもに離発着しているという事実が作れれば、それだけで中国に対する強い抑止力につながるのである。
恐らく10年以内に自衛隊向けの強襲揚陸艦が導入されると考えられ、その時点で、自衛隊におけるF-35B型の本格的な運用もスタートするであろう。
そのころまでには、空自所属のF-35A型の配備も今より進み、自衛隊におけるステルス戦闘機の運用・整備能力も向上しているころであるだろうから、まずは現有装備の改修と米国との共同訓練でノウハウを蓄積することが先決であろう。
ただ、今から10年後の2030年頃には、中国の空母が4隻に増加している可能性が高く、ますます海洋進出を強めてくることは想像に難くない。
よってそのころまでに、自衛隊も固定翼機を船舶で運用できる能力を獲得していることが大切になってくるのであり、そのことが尖閣諸島をはじめとする離島防衛能力を大幅に向上させることにもなる。
いずも型護衛艦の空母化へ向けた改修は、日本が離島防衛に本格的に乗り出すという強い意思表明の現れなのである。










