【邦画】『ハケンアニメ!』   

 

【作品情報】

辻村深月先生の小説。同じクールで制作された多くのアニメの中で、一番成功したものに贈られる言葉「覇権」を取ろうと働く、アニメ制作現場を舞台とする。連載時から挿絵はCLAMPが担当。2015年(平成27年)に第12回本屋大賞で3位受賞。
2019年(令和元年)に舞台化、2022年(令和4年)に実写映画化。ネトフリ配信中
 

2022年(令和4年)5月20日に公開。監督は吉野耕平、主演は吉岡里帆。原作者の辻村も映画製作には企画段階から意見を提供するなど、積極的に携わっている。
映画版では瞳を主人公にライバルである王子との対決要素を強調し、脚本、絵コンテ、原画、背景、CG作成、撮影、アフレコ、編集といった、実際にアニメを作るアニメ制作のセクションと共に、企画誕生の背景、製作委員会の立ち位置、宣伝、放送、タイアップといった、アニメ制作以外の作品を世に届けるためのあらゆるセクションにも、焦点が当たった内容となっている。また、億単位の制作費が無ければ作れないアニメ制作において、制作を実際に行う組織ではない製作委員会の重要性、作品ができても放送などで届けられなければ人々に見てもらえず、ほぼ毎クール50本以上ある新作の中で注目を集めるには、興味の入り口となる有名クリエーターや声優の起用といった話題性や、作品舞台地とのコラボレーションや食品等とのタイアップを通して、作品の存在自体を知ってもらう重要性、それらを含め作品を世に届けるための過程が、フィクションならではのデフォルメも混じえつつ、真摯に分かりやすく描かれており、そうした舞台裏のドラマが本作ならではの見どころとなっており、好きを貫こうとする者たちの情熱、意思の強さ、作品に込めた想いが描かれている。ちなみに、本編のエンドロール後には物語に関わる重要なおまけのシーンが用意されている。

 

 

【感想】

正直期待外れでした。画像コンテンツ制作ものですが、まるで、ノウハウビデオ。

業界の人にはウケるのでしょう。アニメ制作は大変なんだぁーという叫びしか響いてこなかった。画像コンテンツ制作ものは「映画大好きポンポさん」「冴えない彼女の育てかた」「SHIROBAKO」「バクマン。」を観た者にとって、物足りない。何か足りない。主役の二人がずっと暗い。作品全体が悲壮感に満ちている。

 

【登場人物】

 

斎藤瞳 - 吉岡里帆

第2章「女王様と風見鶏」の主人公。真面目を絵に描いたような新人アニメ監督。26歳。容姿端麗で眼鏡を掛けている。父が借金の保証人になり、子供時代はテレビを見ることも塾に通う余裕もなく金銭的に苦労して過ごし、公務員になろうとひたすら勉強してアルバイトをしながらの高校生活を経て奨学金で東京都内の有名私立大学に進学。野々崎勉監督が手掛けたロボットアニメ「ミスター・ストーン・バタフライ」劇場版を、大学2年生のときに友人から借り激しく衝撃を受け、母親を説得し業界最大手の「トウケイ動画」に就職。ライトノベルを原作とする学園もの「わたしが好きって言ってるのに、死にたいとかナイ」や「リデル」など人気作が放送される4月からの春のアニメにおいて「サウンドバック 奏の石」こと略称「サバク」で初監督を務める。過去には、トウケイ動画のテレビアニメである魔法少女シリーズの世界観をアクションゲーム]化した「太陽天使ピンクサーチ」において、オープニングとゲーム内アニメを制作し話題になった。子供の頃、両親と旅行した思い出の地である選永市をロケーション・ハンティングして「サバク」を制作。
映画では主役であり、年齢は28歳で、好物はエクレアとなっており、劇中では銀座コージーコーナーのイチゴ味エクレアも差し入れられた。国立大学を卒業して県庁で働いていたとき王子監督の「光のヨスガ」と出会い、見ている人に魔法をかけるような作品を作りたいと22歳の時に「トウケイ動画」に転職。「サバク」で王子を超えることに人生を懸ける。異業種からアニメ業界に転職した瞳は、セルアニメと3次元コンピュータグラフィックスを融合させる手法で、ペンタブレットを活用し隙間の時間でも絵コンテを進めていく原作者の辻村は、「監督を肌感覚でやっており、本当の天才肌は瞳なんだろう」と語っている。


王子千晴 - 中村倫也

24歳で放ったのデビュー作「光のヨスガ」が脚光を浴びた、天才アニメ監督。その後、スランプに陥り再浮上できずにいた。32歳、身長160cm弱の男。容姿端麗。天才故に奇抜な言動で周囲を振り回すことが多いが、人一倍熱いアニメへの想いを胸に秘めており、アニメが現実を生き抜く力の一部になれると信じている。香屋子に説得され、9年ぶりとなる新作「リデル」で復活を図る。美術系の専門学校生だった頃は、一人でいくつか制作したアニメが高いクオリティーだと話題になったため、トウケイ動画に演出とし入社した際には既に注目された存在だった。
映画では28歳で「光のヨスガ」を世に放ちデビューしたのは8年前になっている。アニメ文化そのものも伝統も愛するがゆえに、紙と鉛筆を用いたアナログな手法で作業し、自身の人柄が表れる生き生きした色使いが特徴的な人物として描かれている。
小説では、具体的な容姿など細部はあえて描写しないことで、読者それぞれが考えるイケメン像や天才像に落とし込んでもらい、自分のイメージしたとおりの姿で読んでもらいたいと考え、王子をあえて「イケメン」「天才」と強い言葉で書くだけに留めている。映画で「リデル」を監督した大塚隆史は「鮮烈にデビューした後、しばらく休んでいたというのは対外的な顔を気にしていたということ。天才を演じなきゃと思っていても、どこかで破綻する。他人は気にせず自分のやりたいようにやったほうがいいが、若さがそれを拒んでいるのか」と語り、原作者の辻村は「王子はいかに自分を天才と見せようかということに必死な人。本当は自分が天才ではなく秀才タイプだと分かっていて、だけど周囲の期待に応えないといけないと思い詰めてしまっている。天才肌では無実は目茶苦茶考えている」と語っている。短編「次の現場へ」にも登場。
 

【あらすじ】

連続アニメ「サウンドバック 奏の石」で念願だった監督デビューを果たした斎藤瞳だが、瞳を抜擢したプロデューサーの行城理は、ビジネス最優先でやりたくない仕事を増やすため、瞳にはストレスになっている。最大のライバルは、瞳も憧れる天才監督の王子千晴が夕方5時台の同じ時間帯に仕掛ける復帰作「運命戦線リデルライト」。その才能に惚れ抜いたプロデューサーの有科香屋子も王子復活に懸けるが、王子の気まぐれに振り回され苦闘。瞳はスタッフや声優たちも巻き込み、熱い想いで覇権(ハケン)争いを繰り広げる。瞳の想いは、誰かの胸に刺さるか?