【邦画】劇場版『きのう何食べた? 

 

【作品情報】

よしながふみの同名マンガを中江和仁が実写化した本作。料理上手な弁護士・筧史朗(シロさん)と美容師の矢吹賢二(ケンジ)の暮らしが、日々の食を通して描かれる。西島がシロさん、内野がケンジに扮したほか、山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツ、高泉淳子、松村北斗(SixTONES)、田中美佐子、チャンカワイ、奥貫薫、田山涼成、梶芽衣子が出演した。

2021年製作/120分/G/日本 配給:東宝

 

【感想】

どっちが正解なのだろう? この作品のポイントは、思っていることをズバッというのがいいのか?それとも、心に秘めておくのがいいのか?難しい問題だと思いました。よく日本人は、口にしなくても通じ合えるものと言われているが、実際は、それが原因で喧嘩することも多いと思います。でも、ホントのことだとしても、ズバッと言い合うのは、それも違うと思います。本音を言う前に、それは相手のことを思っているか考えてから発言するべき、などとか人間とはとか色々考えさせられる作品です。基本はラブコメとして笑えてすごく好きです。

 

【登場人物】

筧史朗 (西島秀俊)
52歳弁護士。ゲイ。賢二からの愛称は「シロさん」。40歳の時、新宿二丁目の店で知り合った賢二と、賢二が勤める美容院で客として再会し、何度かデートらしき物を重ねるうちに恋人同士になり同棲中。史朗からすると賢二はまったく好みのタイプではなく、史朗は好みのタイプの男性には不満があっても言えず、むしろ何でも言うことを聞いてしまう性格のため、賢二以前の同棲相手である伸彦に対してはストレスを溜めていたが、賢二は好みで無いが故に言いたいことを結構言い、快適に過ごしている。
ゲイであることをカミングアウトしていないため、職場の面々には「彼女がいる」と思われている。仕事にはやりがいを求めず、帰宅後や休日に自宅で品数多くバランスの良い食事を作ることを楽しみにしている。若いころは料理はしていなかったが、30代に入ってから太った体を鏡で見てショックを受け、その直後に付き合った男性の作った料理を食べることで痩せたのをきっかけに自分も料理を始めた(#46)。大抵の料理はうまく作れるが、思い切りがない性格ゆえ天麩羅(かき揚げ)が上手く作れないという一面も。法律相談のテレビ番組に出演依頼が来た際は有名になるとアウティングされる恐れがあることを理由に断っている。
几帳面な性格で、毎日家計簿をつけて浮いた予算は貯金する倹約家(悪く言えばケチ)。近隣のスーパーの底値を把握しており、例えば「必ず牛肉でなければ」というメニュー以外は牛肉を使わないなど、家計をやりくりしている。
太らない努力をしているため、年齢に似合わず若々しく一般的にはイケメンと評される外見。しかし、ゲイの世界ではモテるタイプではない。ゲイには受けないタイプの女性アイドルが好きだったり、他人と一緒に食べるお弁当の見た目に無頓着だったりと、自分の趣向がゲイらしくないことに若干コンプレックスを抱いているが、逆に人前でゲイらしさが出ることを恐れてもおり、中途半端になってしまっていることにもまた悩んでいる。小日向からは言動にオネエは入っていないがオバチャンが入ってると言われている。賢二から「味覚がおじいちゃん」と言われるなど、加齢に伴い変化が生じている。
女性アイドルに関しては、小日向がマネージャーをしていた「松浦比呂子」「吉野可穂」「三谷まみ」らのファンで、特に三谷まみ(後述)は小日向からディナーショーのチケットを回してもらうほどの大ファン。休日の土日に見るために、彼女たちが出演しているドラマや映画をたくさん録画している(#38)。
弁護士としては一般民事が主で企業の顧問弁護士も務めているが、刑事訴訟の経験はあまり無いため裁判員裁判が苦手。職場には定時で退社することを公言しているが、周囲から舞い込む相談には断りきれず、要領が悪いところがある。弁護士になったのは自分が死ぬときに法律上の手続きを自分で後始末をつけられるためだと言っているが、賢二は「一匹狼でもちゃんと稼げるから」「いい大学に入って弁護士になることが一番の親孝行」と推測している。ずっと責任のある地位を避けてきたが、賢二が美容院の店長になってから一年以上頑張っている姿を見て、自分ばかりがのらりくらりしているのは賢二に悪いという気持ちもあり、所長に就任、事務所の名前も「上町・筧法律事務所」となった。
ゲイであることが家族にばれたのは高校生の時で、本棚の奥に隠していたその手のエロ本を見られて発覚した。母の久栄はショックのあまりその場で失神して3日間寝込んだ挙げ句、その次の日にいきなり新興宗教に走ってしまった。今でも家族仲が悪いわけではなく、お互いを思いやってはいるのだが、史朗は普通の家庭を持つことが出来ないという罪悪感から両親とは距離を置きたがり、実家は史朗宅から電車で30分程度の場所なのだが滅多に帰らない。だが、賢二に諌められて正月に帰省するようになり、ある年は賢二も一緒に実家に連れて行ったこともあったのだが、その後の両親の応対をきっかけに年末年始は帰省しないと実家に宣言した。
だがそれ以降は月に一度母親の誘いを断りきれずに嫌々帰省していたのが月に2、3回は自ら帰省するようになり、親子3人で旅行に行くなど親子関係自体はむしろ改善されている。両親に孫の顔を見せられないことに負い目を感じてはいるものの、自分自身は子供が欲しいと思ったことはない。
スイカが大好物で、それをきっかけに料理友達となる主婦・佳代子と知り合った。
学生時代に彼女(仁美)を作ったが、その彼女もボーイッシュで女性をあまり感じさせない見た目で、それでも駄目だったと回想しており、バイセクシャルではなく純粋なゲイであると語っている。女性アイドルが好きだという話を小日向とした際にも「筧さんってバイセクシャルなの?」と聞かれたが否定している。ゲイにはモテないタイプだが女性には非常にモテるため、知人の結婚式の二次会では独身男性がほとんどいないこともあって質問攻めにあう。このことを嬉しいこととは思わず、既婚者への偽装として賢二とのペアリングを結婚指輪として薬指にはめるために二人で買いに行っている。
料理への極度のこだわり(一汁三菜の献立のときは少なくとも2品はノンオイルルール など)は職場の同僚にドン引きされるレベルではあるが、「料理は趣味ではなく生活の一部」という認識らしく、無趣味な仕事人間であることに一時的に悩んだが、佳代子には「弁護士さんには定年はないんだから(熟年離婚のような心配はない)」、賢二からも「自分にも趣味らしい趣味はない」とフォローされた。
学生時代から友達が少なく、初詣には家族でお昼にしか行ったことがなかった。そのため「友達と初詣って言ったら普通大晦日からのカウントダウンだよ」と賢二から言われて驚いている。売春防止法で捕まった女性の面会に行った際に「どうせ家に帰ったらきれいな奥さんと子供が待ってて親だってまともで友達もたくさんいるんでしょ?そういう人にはわかんないよ」と言われて「妻も子も俺にはいないよ(ちなみに友達も少ないよ…)」と友達が少ない自覚はあるらしい。
矢吹賢二 (内野聖陽)
50歳。ゲイ(「どちらかといえばタチ」)。史朗の恋人で、史朗のことを「シロさん」と呼ぶ。焼きもちやきで、史朗が女性の悪口を言っていると内心喜んでいる。ピンク色が好きだったり、細やかな気遣いができたりと、ゲイらしい趣向の持ち主。また、芸能人では女性アイドル好きの史朗とは反対で、ジャニーズを始めとした可愛い男の子が好き。ただしジャニーズを見るときの気持ちは「親戚の子供が頑張っているのを見守るおばさんみたいな気持ち」であり付き合いたいといった意味合いではないらしい。本来尽くすタイプなのだが史朗は例外で自分で何でもできてしまうとのことで、史朗が風邪を引いた際には張り切って看病したりする。同棲しているマンションの家賃はきっちり折半で5万円を史朗に払っているが、事故物件であることを聞かされた際は霊感があるらしく非常に怖がっている。賢二の寝室が犯行現場であることは秘密にされている。
美容師をしており、美容学校時代の同級生である三宅祐が店長をしている美容室に勤めていて、自宅で史朗の髪を切ることもある。美容師としての実力は人並みだが、明るい性格で非常に人当たりが良く、どんな客でも器用にさばけるため、面倒な客の対応に当たる爆弾処理班の役を担っている。祐に年齢的な面から独立を促されても「経営には向いていない」という理由でその気は無かった。母親から出張カットの話を聞き、賢二も美容院までなかなか来られなくなってしまった年配の顧客のために、自宅まで訪ねて出張カットをすることを思いつく。その後、他の顧客からも出張カットの要望がぽつぽつあることや、(主に、店長である祐の浮気問題から)美容院の先行きの心配もあり、本格的に出張カットの仕事をすることを考え始めていた。だが、#112で祐に押し付けられる形で店長に就任。計算もパソコンも苦手なのでレジ締めの作業や祐への売上報告のメール送信に四苦八苦するものの、客の要望を聞いて店の営業時間を変更するなどしてどうにか経営を安定させている。なお、出張カットも店の定休日である火曜に続けている。
ゲイであることは周囲にカミングアウトしており、史朗とは違いゲイとして見られることに抵抗がない。史朗のことも「一緒に暮らす人、彼氏」として周囲に話している。性自認については、物心がついた頃は「将来は女の子になるんだ」と思っていたが、その欲求はだんだん小さくなり、男の子が好きという欲求だけが残ったと史朗の実家に行った際にモノローグで語っている。
美容師になりたてのころは、それだけでは生活ができなかったため、水商売(ホストクラブ)でボーイ(お立ち)のアルバイトをしていたことがあり、その時は周囲の人間からは名字が有名漫画の主人公と同じだったため「ジョー」というあだ名で呼ばれていた。
実家は埼玉にある美容室で家庭環境はあまり良くなく、史朗と交際を始めてからは父親の遺骨引取や葬儀までは一度も実家に帰っていなかったため、史朗は賢二の実家が岐阜県か長野県あたりにあると長い間勘違いしていた。賢二はそうした家庭環境を重く思っている様子はないが、史朗が家族に対する愚痴を言った時に「シロさんは贅沢だよね」と珍しく静かに怒りを表したことがある。賢二がゲイであることは母も2人の姉も知っており、母はその事実を知った時は激高したようだが、その後は落ち着き、姉たちも普通に賢二を可愛がっているようで、史朗と同じく家族仲は改善されている。ちなみに上の姉からは賢二が姉弟の中で一番女子力があり、母からは賢二が一番おしとやかだと評価されてもいる。
好き嫌いがあまりないようで、史朗が作った食事をどんなメニューでもいつも喜んで食べている。特に茄子と桃が好物。当初は料理は上手くなく手際も悪かったが、「ためしてガッテン」で覚えた玉子焼きなど得意料理を得て徐々に料理の腕を上げている。インスタントラーメンはみそ派。仕事が忙しくなった史朗と食卓を共に出来なくなった寂しさから、喫煙で気を紛らわせる場面があるので一応喫煙者らしい。
妻子ある男性と不倫をしたことがあるなど、過去に様々な恋愛経験をしたことがある。理想の男性は『シティーハンター』の主人公・冴羽獠で、史朗のことを「三次元の冴羽獠」と評している。ちなみに携帯の着メロも史朗からの着信にはアニメ『シティーハンター』のエンディングテーマ曲「Get Wild」を設定している。
「自分の腕一本でやっていくため」に美容師になったのだが、宵越しの金は持たない主義で湯水のようにお金を使ってしまうので、史朗からは「頼むから少しは貯金してくれ」と思われている。
元々痩せやすい体質のため、ストイックに己の肉体を管理する史朗と違ってこれまで運動などは特にしてこなかったが、年齢相応に贅肉が付いてきたことを気にして史朗と同じジムに入会して水泳(ただし賢二はいわゆる「カナヅチ」のため、実際は水泳でなく水中歩行)をするようになった。しかし、定休日の火曜日に出張カットをするようになってからは丸一日の休みが殆どなくなったためジムに行く頻度が少なくなったことで体型に影響が出てきている。また、薄くなってきた頭頂部を目立たなくするために、やや伸ばし気味でゆるくパーマをかけていた髪を短髪にし、色も黒髪から金髪に変えた。
自分が50歳に達した事実を認めることを頑なに拒否し、誕生会も嫌がったが、パートナーが無事に50歳を迎えたことを祝いたいという史朗の口八丁で丸め込まれて、とりあえず史朗と合同(史朗は53歳の誕生祝い)の誕生会だけは受け入れた。

【あらすじ】

小さな法律事務所で働く弁護士・筧史朗(西島秀俊) は、同居する恋人の美容師・矢吹賢二(内野聖陽)の誕生日プレゼントとして京都旅行を提案。賢二は大喜びで旅を満喫するが、旅行中のある出来事をきっかけに、二人は互いに本心を明かせなくなってしまう。そんな中、仕事帰りの史朗は見知らぬイケメン(松村北斗)と賢二が親密な様子で歩いているのを目撃。動揺する史朗は、賢二にその青年のことを聞くことができず悶々とする。