術後もらっていた休みも終わり久しぶりに出社した
前日に買ったお菓子と職場の皆へ向けたメッセージカードを事務所の机に置いて、顔を合わせたスタッフに長期休みを貰ったお礼をして回る
こんなにも辛く悲しい経験をしても、私は謝ることしかできなかった
長い間お休みしてすみません
気を遣っていただいてすみません
そんなふうに皆に謝った
流産を経験して辛い自分がどうしてこんなにも周りに気を配らなければならないのだろう
その折り合いは難しい面はあると思う
ただ、もっと社会の中で流産した方々が生きやすければいいのに
報告から術後の回復まで気持ちが張りつめている
手術をして無事に終わったからといってそれで全てが終わりではない
体の回復も、気持ちの整理も、もっともっと時間がかかることだ

復帰後暫くは触れてはいけないもののように接された
私は極力皆との距離感を詰めるよう明るく接した
それは私のため
皆のためではない
今後またこの職場に腰を据えるのだから、しこりはない方がいい
その作戦は大成功だった
大成功すぎて、3日ほどで妊娠すらしてなかった時期と同じような扱いに戻った
その中でも私はもがきながら人知れず泣く夜もある


手術から三週間が経った
最後の診察と願いながら病院へ向かう
病理検査の結果が悪かった場合はまた治療しなければならないんだろう

病院へ着いてほとんど待つことなく順番はやって来た
久しぶりに顔を合わせた先生に体調の具合などを聞かれる
その後診察台へ上がり子宮の回復具合を診てもらった
「とっても綺麗に回復してます。左右の卵管も綺麗です」
ほっと胸を撫で下ろした
服を着直しまた座ると病理検査の結果も問題がなかったことを伝えられる
今後は一度生理がきたらまた妊活も再開していいとのことだ

「ではこれで今回の診察は全部終わりです。何か聞いておきたいことはありますか?」
私はこのあと妊娠できてもまた流産するんじゃないかと怖いことを告げた
確率は同じ、私にも次は大丈夫と軽率なことは言えないと先生が答える
先生の正直な回答に私も前を向けた
「あの…ありがとうございました。先生に担当してもらえて心強かったです」
どうしても言いたいことだった
先生はいつもかっこよくスマートに私の背中を押してくれた
「ありがとう。お大事になさってくださいね。次は妊婦健診でお待ちしてます」
最後の最後にまた先生には背中をポンと押され、頭を下げて病院を出た

清々しい晴れの日、子供たちが公園を走り回っている
視界の端に咲きかけの桜が飛び込む
流産宣告を受けたあの日もとても晴れた日だった
それでも私はこの日、笑っていた


また続きます