クリスマスプレゼントに心暖まるお話を | 片腕坊主と空飛ぶギロチン 阿鼻叫喚天麩羅地獄

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泥団子を世界一ピカピカでカチカチにできるヤツ決定戦開催だぜっ!

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見てくれよ。
このハンバーガーのウマそうなこと!
タップリのキャベツにトロットロのチーズ。
そして何より、肉汁たっぷりの香ばしいパテ。
う~ん、よだれが溢れてくる。

妻と娘と、ここで一緒に食事をする約束なのだが、なかなか来ない。
もう、これ以上は辛抱できない。
先に食べて待っていよう。
1時間も待ったんだ。
文句言われるいわれもないだろう。

うん、やっぱりウマい!
俺は物心ついた頃からこのダイナーでこのハンバーガーを食っている。
ガキのころは週に1度か2度は母親に頼んで夕飯をここで食ってたし、
ハイスクールこのダイナーが溜まり場だった。
愛しい妻に出会ったのもここ。

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俺には甘すぎるストロベリーシェイクを美味そうに喉を鳴らして飲む彼女を始めて見たときから、
俺は彼女にゾッコンだった。
幸いな事に、甘ったるいシェイクを気に入った彼女はたびたびこのダイナーに姿をあらわすようになる。
意を決して声をかけてから半年がかりで彼女を口説き落としたときには、
ダイナー中の客から拍手喝采を浴びたっけ。

妻との結婚パーティーももちろんここ。
妻の次に愛しい娘もここのバニラシェイク(ストロベリーよりはいくらかマシ)とパンケーキが大好き。
ダイナーの親父さんにもよく懐いていた。

しかし残念ながら親父さんは去年姿をけした。
突然の失踪。
その前日に親父さんとこの店で話した時は普段と変わったところなどなかったんだけど・・・・
警察はもちろん親父さんに世話になった俺達、客達も親父さんの行方を探しているんだが、
その行方はようとして知れない・・・・
それどころか、それ以来たびたびこの街で行方不明者がでるようになったんだ。

親父さんがいなくなってすぐ、彼の息子アルバートが店に立つようになった。
顔色は悪いし少し挙動不審なところはあるが、悪いヤツじゃない。
ときどき、タチの悪い冗談をとばすが、料理はうまい。
親父さんにヒケをとらない。
いや、アルバートが料理するようになってからハンバーガーの味が良くなったような気がする。
もしかしたら、ストロベリーシェイクも今なら美味しく飲めるかもしれないな。

それにしても妻と娘はどうしたんだろう?
携帯にかけてもでやしないし、何かあったんだろうか?

「アルバート、妻と娘に何かあったなんてことないよな?」

「さぁ、どうかなぁ・・・・親父がいなくなったのも突然だったからなぁ」

胸の中で何かがザワザワと騒ぎ出す。

「妻達も親父さんみたいにいなくなったっていうのか?」

「いや、いや、例えばの話さ。大丈夫。きっとふたりはすぐそばにいる」

「でも、もう1時間半は遅れてるし」

「そばにいるさ」

「何でそう言いきれる?」

「さっき会ったからね」

「あった?先に来てたのか?ならどこへ行ったんだ?」

「来たのは昼ごろかな。ふたりそろって」

「昼に?」

「今もいるよ。すぐそばに・・・・」

「なんだよ。もったいぶらずに教えてくれ」

「腹の中さ。君の腹の中」

「腹の?」

「うまかったろ?ハンバーガー・・・・」

「・・・・・・アルバート!
悪いけど今は趣味の悪い冗談に付き合ってやれる気分じゃないんだ!」


「・・・・・・」

「怒鳴って悪かった。もう1度、電話してみるよ」

「ああ、俺こそ悪かったな・・・・」

席を立ち、妻のダイヤルをプッシュする。
でない・・・・
な~に、大丈夫さ。
もしかしたら、ふたりそろって居眠りでもしてるのかも?
それとも映画でも観てるとか?
もう少し待って来なかったら家に戻ろう。
それまでオニオンリングでも食べてビールを飲もうかな。

それにしても、
アルバートにも、あのタチの悪い冗談を言うクセさえなければな。
何が、腹の中だ!
悪趣味なヤツめ・・・・

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