仕事に追われ ヘロヘロで 会いに行く

 

ひと晩中仕事して そのまま アトレーと朝散歩

10時に帰って来て そのまま夕方まで 寝てしまう

 

せっかく 朝型になってたのに

繁忙期が落ち着くまで あとひと息 がんばろうっと

 

***

 

仲良し作戦は あの手この手で 実行中

 

散歩の後は アトレーのサークルに お邪魔する

特に何をするでもなく 足を伸ばして座り込む

 

アトレーは距離を取り うっとうしそうにしていたが

この頃は ふんふんしながら 寄ってくるようになった

 

アトレーは ふんふんしながら くっついたり離れたり

私は なぜたり 話しかけたり ちょっとブラシしたり

ヴーッって言い出したら終了 また明日ねーと帰る

 

今日は 体育座りの私のヒザに アゴを乗せて来た

 

えーっ なになに? 甘えてるの?

お前 そんなことも できる子なの?

 

見えない瞳が まっすぐ私を見つめている

顔をムニムニして いっぱい話しかけながら 可愛がる

 

突然 タイムリミットが来たらしく 唸り出す

私のヒザに アゴを乗せたまま 吠え出した

 

吠えるアトレーを そのままヨシヨシしながら 考える

もしかしたら この子が吠えるのは 威嚇だけではないのかも

 

他のワンコが テンション上がり過ぎて

飼主に飛びついたり 顔じゅう舐め回したりするのと同じ

ヒトがうれし過ぎて泣いたり 感極まって叫んだりするのと同じ

もしかしたら 表現のひとつなのかもしれない

 

うれしい時に鼻にシワを寄せて 唸るクセがあるワンコが

なかなか飼主に理解されなかった話を 読んだことがある

アトレーも近いものが あるのだろうか

 

まあ まだまだ推測でしかなく 本当はイラついてるのかも

 

確かなのは 構わず なぜ続けてあげられるくらい

私が 吠え続けるアトレーに 動じなくなったってことだ

 

威嚇が通じない 威嚇する必要がない そもそも威嚇ではない

いずれにしても ヒトと暮らすには 受け入れられづらい行動

いつか そんなことしなくなる日が 来るといいなあ

 

個人的には どっちでもいいんだけどね

 

さあ 今日もこのまま朝まで仕事だ

とっとと 終わらせよう

 

 

 

 

 

 

 

仕事が 詰まりに詰まっちゃって

アトレーの散歩に 行けない日が続く

 

寝る時間がないのも シンドイけど

アトレーに会えないのも ストレスがたまる

 

そんななか スタッフさんから LINEが届く

 

 

あっ アトレー♡

 

まだ 私といる時はリラックスできず

横になった姿を 見たことがない

 

お前 そんなふうにゴロンてするの かわいいな

ちょっと柔らかいところに アタマ乗せるんだ

 

〆切に追われ 張り詰めてた気持ちがほぐれ

ふうっと ひと息ついて 珈琲を淹れる

 

あれ? そういえば写真だけ?

少し待ったが メッセージは来ない

 

『ありがとうございますー

 癒されましたー がんばりますー』

 

こちらから送ってみたが 既読も付かない

 

あれ? どういうこと?

もしかして 寝てるんじゃなくて 倒れたの?

 

アトレーは二年前に1度 てんかん症状で倒れたことがあった

しばらくは投薬治療をしていたが 落ち着いたので 今は様子見

発作を起こした時の対応は すでに教わっている

眼振の確認 緊急受診 とにかく一刻を争う

 

既読が付かないのは 病院に行ったり バタバタしてるのか

いや いつものワンニャンのお世話に 忙しいだけかもしれない

 

倒れたとしても 私はまだ 正式な飼主ではない

駆けつけたところで ジャマになるだけだ

 

どちらにしろ 急いで手持ちの仕事を 終わらせよう

万がイチの時 すぐ動けるように アトレーに会いに行けるように

 

『倒れた訳じゃないですよねー?(笑)

 明後日には お散歩行けると思います

 待っててねー とアトレーにお伝えください』

 

冗談めかしたLINEを送ったあと 携帯を手元に置いて

不吉な想像を振り払い 珈琲をガブ飲みしながら 仕事する

 

次の日の夕方 もう1枚

 

 

 

良かったーっ!

そうですよねーっ!!

 

お互い 明日も生きてる保証なんて どこにもない

 

明日は 早めに会いに行こう

ガルガル言われながら 散歩しよう

 

アトレーが そっけない

 

お散歩前も お散歩後も 寄ってきてくれない

あんなに すりすり してくれたじゃん

 

サークルの中でも 距離を取り

私に 背を向けて立ち 動かない

 

知らない人が 急に なれなれしく

毎日来るようになったことへの 違和感なのか

他のボランティアさんとは違うと気がついての 様子見か

持ち込んだハーネスが 気に入らなくての 反抗か

 

   犬だって そんな日ありますよー

   気分とか タイミングとか よくあることです

 

スタッフさんが 笑って言う

 

そうか そういうもんなのか

たまたま 昨日今日 キゲンの悪い日が続いてるのか

じゃあ 気にしないで いいのかな

 

帰ろうとした その時

 

アトレーが 後ろに耳を倒して しっぽふりふり

スタッフさんに 全力で甘えるのを 見てしまった

 

全然 キゲン悪くないじゃん!

 

そういうことかもなー

 

 

アトレー 今日は朝から ご機嫌ナナメ

 

スタッフさんのご飯の用意が

少し遅れて 10分くらい待たされた

 

待ってる間 アトレーは サークルの中で荒れ狂い

食べ終わってもガウガウしてるので 少しクールダウン待ち

 

そろそろいいか と ハーネスチャレンジしたものの

焦って ひとつ目のバックルのセットをし損なう

 

アトレーの怒りが 再燃する

 

ナンダヨ!ナンダヨ! と ガウガウワンワン 吠えながら

首から未装着のハーネスをぶら下げ ぐるぐる歩く

ぶら下がったハーネスが 前足に当たり ますます怒る

 

どうしよう いったんハーネスを 首から外すか

いっそ捕まえて 強引に 装着させちゃうか

 

   私 やってみましょうか

 

スタッフさんが 笑いながら来てくれた

アトレーは 担当スタッフさんの声が聞こえると

しっぽをフリフリ 近寄ってきて ガウガウワンワン 訴える

 

   そんな怒ることないじゃなーい

   いいな お散歩 行ってくるんでしょ?

   今日は いいお天気だよー

 

吠えるアトレーを 正面から抱き止め

ササッと ハーネスをセットしてしまう

 

さっすがー!

 

私が アトレーの信頼を得るには

まだまだ 時間がかかりそうだ

やっと撮れた

アトレーのかわいい顔

 

 

見えない瞳は 瞳孔が開いて つぶらな黒目

マズルには 多頭飼育時代の 無数の咬み跡

 

 

マズルは 犬の急所なんだ

そこを咬まれるなんて 負け犬の証

 

でも アトレーは 心折れることなく 戦い続けた

現場で危険な子と判断され 保護されるその時まで

 

3年経った今でも 全力で牙を剥き 唸り吠える

ケモノの顔になられると やはり恐怖を感じてしまう

 

そんなアトレーのことを スタッフさんたちは

笑いながら 愛おしそうに言う

 

   アトちゃんは ムキムキだもんねー

 

そうか〝アトレーが牙を剥く〟のは怖いけど

〝アトちゃんがムキムキしてる〟のは かわいいかも

 

だいぶ分かってきたよ アトレーに攻撃性はない

全力で NO を伝えようと 意思表示して見せてるだけだ

 

咬み合いになれば 相手の犬だって相応のキズを負う

意思表示することで 避けられた諍いもあっただろう

双方キズ付くことなく収まるなら 越したことはない

 

いつか アトレーにも 必死にがんばらなくてもいい

まあいっか と思える 穏やかな日が来るといいな

 

今のうちに 迫力のムキムキを 写真に収めたい

明日からチャレンジしてみよう

アトレーと同じ犬舎の チュンちゃん

臆病でおっとりした大型犬 コリー系の女の子だ

 

チュンちゃんのサークルには 珍しく犬小屋が置いてあり

知らない人が来ると サッと小屋の中に 隠れてしまう

 

最近では 毎朝やって来る私に慣れて 誰よりも先に私に気がつき

いそいそと小屋から出て アタマを寄せ 甘えてくれる 

 

   この子は10年前 ここから譲渡されてった子なんだけど

   おととし 迷子で保護されて ここに戻って来たの

 

飼主の迎えもなく連絡も取れず 警察には〝遺棄〟で通報したそうだ

 

   飼主さん あまり散歩もシツケも してなかったのかなあ

   スタッフが教えたから 今は散歩上手だし オスワリもできるよ

 

仔犬のうちに保護されて 譲渡も決まるって すごく幸運なことなんだけど

チュンちゃんは それからの8年間 可愛がってもらえたんだろうか

 

大型犬だと気付かずに 仔犬を引き取り 持て余してしまったのか

シツケが苦手な飼主さんで 臆病な大型犬を 制御できなくなったのか

事情はあるかも知れないけど それにしたって 遺棄はないでしょ 

 

いろいろ いろいろ 考えてしまう

 

私はもう アトレーと向き合ってるから 何もしてあげられないけど

介護時に 抱きかかえられる自信がなくて 大型犬は避けてたけど

 

もしも二年前 迷子になったチュンちゃんが ウチの玄関前に座ってたら

私はチュンちゃんを ウチの子にしてあげたかった と思う

散歩が下手でも オスワリできなくても 抱っこできない大型犬でも

 

チュンちゃんは もう 今年で11才のシニア犬だ

もう一度 やさしく暖かいご家族に恵まれることを 心から祈る

 

がんばれ がんばれ

 

 保護犬OKの 札幌近郊の方 チュンちゃん いかがですかー

 

バタバタと仕事に追われて 忙しい日々が続く中

欠かさず 毎朝1時間 アトレーのもとに通う

 

今のところ 朝型をキープ 軽い運動にもなり

PC仕事のストレス解消ができる いいことずくめだ

 

今日は ハーネスを変えてみた

 

できれば 二代目の使ってた ウチにあるハーネスを使いたい

ただ 保護施設で使ってるものと 若干形状が違う

どちらも 首に通してから バックルを留めるタイプだが

保護施設のはバックルがひとつ ウチのはふたつだ

 

アトレー 散歩行こー

 

もう 私=散歩係で認識してくれていて

シッポを振りながら いそいそと寄って来る

 

持って来たハーネスを 何食わぬ顔で サッと首にかけ

 

  ヴーッ ワンッワンッ!

 

1発でバレた 匂いかな 感触かな すごいな アトレー

 

チガーウ!チガーウ! と言いたげに 唸りながら吠えながら

首からハーネスをぶら下げたまま サークル内をぐるぐる歩く

 

だいぶ お前のブチギレにも 慣れて来た

そんな怒んないでよ 大丈夫だから ちょっと違うだけだから

 

見えない分 ちょっとした変化を 警戒するのもわかるけど

私がまだまだ 信頼されてないのも 痛感する

 

ほら カチッ ちょっと反対向いて もうひとつ カチッ

ほら できたできた いいじゃん 似合うよ 散歩行こ!

 

そんな悪くないでしょ? 高かったんだから それ

二代目の時 ここのスタッフさんに 勧められて買ったけど

たった4年間しか使ってないんだ お願い 使い倒してよ

 

いつも通り ゴキゲンで散歩して スムーズにハーネス外して

いつも通り 10分くらいサークルで ヨシヨシして帰る

 

サークルの扉を開けて 塞ぐように私が座り込むと

自分から寄って来て アタマを押し付け カラダをすり寄せ 

やさしく手や顔を ペロペロしてくれる

 

なに もう 仲良しじゃん

 

ブラシは ブチギレられるから しばらく封印

そうっと アタマをなでなで 背中をカキカキ

 

急に スリスリが止まったかと思うと

ヴーッ!ワンッ! と怒り出す ギュッって寄り添ったまま

 

なに もう 分かんないってー(笑)

 

タイムリミット? 時間制限があるのかな?

怒り出す前に スッと離れてくとか なんかあるじゃん

 

私は今日も アトレーに振り回されてる

超☆楽しい

 

 

 

 

 

いつも アトレーの散歩で会う 保護施設飼いのハルくん

車椅子に乗って 前足を使い うれしそうに歩き回る

 

   下半身が麻痺して 寝たきりになってから

   目の光が消えて 表情も虚ろになって来たんですけど

 

レトリバー系の大型犬 腰の褥瘡が痛々しい

 

   そういえば ちょうど良いサイズの車椅子があったなあ と思って

   試しに乗せてみたら みるみる 目がイキイキして来て 表情が明るくなって

   うれしそうに 走り回るようになったんです

 

今は雪解けで地面のコンディションが悪く 歩き回るのがせいいっぱいだけど

垂れ流しになってたトイレも 散歩中に自分でするようになったって

 

犬も人も カラダ起こすのって大事 歩くのって大事

 

明日は 施設の母に会いに行こう

しばらく仕事に追われて 行けてなかったけど

 

ベッドから引きずり出して 杖ついて歩かせて

寿司でも焼肉でも 一緒に食べに行こう

 

記憶には1ミリも残らないけど 何かしら カラダにいいに違いない

記憶には1ミリも残らないから いつでも 母に奢られ放題だ

 

遠慮なく 美味しいもの食べに 連れ出してやる

 

 

同じ犬舎の小柄なシバ系 梅ちゃんの話

 

譲渡先の飼主を咬んで 戻されてしまった子

猛犬注意の札が下げられ 半月通う私に いまだ吠えまくる

 

  あー あの子ねー

  奥さんを咬んじゃったんだよねー

 

病院帰りの車の中 スタッフさんが ポツポツ話す

 

  この子 咬みますよって 言ったんだけどなあ

  大丈夫 大丈夫って 引き取ってくれたんだけどなあ

  

もう 自分の家の子になってても 咬んだら返すんですね

 

   うーん 甘かったというか

   そもそも 思ってたのと違ったみたい

   犬はこうあるべき って思い込みがあって

   奥さんがシツケようと 頑張っちゃったみたい

   犬だって いろいろなのにねー

 

そりゃあ 犬だって 怒ったり 怖かったりしたら 

当然 唸ったり 吠えたり 咬んだり するだろう

引き取り間もない梅ちゃんを そこまで追い詰めた飼主が

反省して 変わるべきだったんじゃないのか

 

   私は アトちゃん いいと思いますよー

   かわいいし 元気だし ヒト大好きだしー

 

そうそう 診察中 メッチャ良い子で 意外でした

抱っこは諦めて って言われてたんですけど

普通にみなさん ヒョイヒョイ 抱っこされてましたよね

 

   えー 誰が言ったの? 全然できるよー

   怒ったり 唸ったり 牙剥いたりしなかったのは

   きっと 自分のナワバリじゃ ないからだよ

 

私 アトレーのサークルで 撫で回し続けては メッチャ怒られてます

 

   そうやって生きて来たんだもん ナワバリ意識強いよね 笑

 

そっか 大事なテリトリーに ずっと居られるのが イヤだったのかな

不安になって来て そろそろ帰れ! って 唸り出すのかな

 

ブラシがどうとか 触る場所がどうとかの 問題じゃなかったか

 

よし とにかくお散歩だ

まずは アトレーの好きなことで 距離を詰めよう

おとといから 朝ご飯をあげる人にも 昇格したから

これから どんどん 私の株が上がるはず

 

アトレーを追い詰めず 自分も煮詰まらず

焦らずゆっくり 仲良くなろう

 

 

ちなみに車内 クレートに入れられたアトレーは 大暴れ

クレートごと 車のラゲッジを ゴロンゴロン転がっていた

アトレーの散歩中 2匹の犬を連れた方に 声をかけられた

 

  ウチの子たち アトレーと同じ所から

  レスキューされて来たんですよー

 

白茶と白灰 キレイな長毛 そっくりな色違いワンコ

2匹とも シッポを下に巻き込み 低い体勢で怯えて歩く

 

  いまだに外に出たら こうなっちゃうんですよ

  家の中では のんびり落ち着いてるんですけどねー

 

あの子たちは3年間 大切に飼われてもなお キズは癒えていない

いまだブチギレる アトレーのキズもまた 深いのだろう

 

 

健診の帰り 病院担当のスタッフさんが 車の中で話してくれた

 

  アトレーは 100匹の中から2番目に レスキューされた子です

 

  1番目は おばあちゃん犬 ご飯になかなかありつけず

  ほぼ寝たきりで 他の子に踏まれながら 暮らしてました

 

  2番目のアトレーは 強い子が仕切り 弱い子がスミッコで暮らす中

  どこにも属せず 秩序を乱し トラブルを起こし

  ケンカばかりで これは危ないと 優先的に保護したんです

 

外の世界に怯える色違いワンコは スミッコの弱い子だったんだろうか

アトレーは 牙を剥き 戦わなければ 生き残れなかったのだろう

 

保健所と複数の保護団体で協力し 少しずつ保護してはいるのだけど

3年経った100匹多頭飼育現場には 今も 何十匹が残されているらしい

 

かわいい犬と 楽しく暮らしたかっただけなのに 切ない話が 胸に刺さる

自分の無力を再度 痛感しながら 私は 私の出来ることを

 

 

アトレー ウチにおいで

お前が ひとりで守り抜いた お前の命

これからは 私も一緒に 全力で 守らせてもらうよ