最近めっきりファンタジーの国に住んでいる祖母が、まだファンタジーの国と行き来していた頃、よく話していた惚気話がある。
おばあちゃんの惚気話ってなんか可愛い。
うちの 祖父母には子供がいないんです。
うちの父は祖母の姉の末の息子を養子としてむかえているのです。
なかなか子宝に恵まれず、時代も時代なので責められるのは女性側。
祖母は辛い思いをしたと思います。
あの世にも血の池地獄という、女性だけが堕ちると言われていた地獄があったように、子供ご授かれないもの、あと出産には血がつきものなので、それであるとか、月経など、なにかと付きまとう血は不浄とされていたので、女性は地獄逝きなんて、今じゃ片腹痛い様なことも当たり前でしたしね。
そんなある日、祖父が急に「そうだ、和歌山城に行こう」と言い出したそうです。
和歌山城に着くと、そのそばにある和歌山日赤病院に祖父は入り、祖母に子宮の検査を受けさせたのです。
結果は祖母の身体に異常はない。
となると、わたしか。と、祖父は自分も検査を受けた。
祖父の方に問題があった。
それが発覚してから、祖父は今まで以上に優しくなり、祖母に
「わたしは貴女に何不自由ない暮らしを生涯に捧げます」
と言い、世界各国色んな場所に連れて行き、その生涯を祖母に捧げた。
亡くなる時も、祖母に食事をとらせてもらい、完食したあと眠る様に息を引き取った。
死後も、祖父の有り余る富は祖母におりつづける。
なんの不自由もない老後までプレゼントした。
何度となく祖母から聞かされる惚気話。
あたしの知ってる祖父はお金とお嬢(美空ひばりさん)が大好きで、庭中で菊を育てる変わったひと。
近所でもかなり変人で有名でしたが…。
でも、孫のあたし達にも出先では必ず土産を買ってきて、休日は何処かしこに連れ出してくれた。
ほんとは子供ほしかったんやろなぁ。
おじいちゃんではなく、「パパちゃん」と呼びなさい。
よくそう言われた。
タコとパセリが好物だった。
一人称が「わたし」で、孫にも敬語だった。
耳が遠いのは戦時中に上海に耳を置いて来たかららしい。
ふんどしをこよなく愛用していた。
手品が上手だった。
算盤をおくと右に出るものがいなかった。
やたらパンダを孫に与えたがった。
祖父が作ってくれた味噌汁にはソーメンと祖父の指先が入っていた。
なにより祖母が大好きだった。
あたしに祖父の血は流れていないが、その生き方、考えなどは今になって伝わった気がする。
来月の今日、クリスマスの次の日の朝が祖父の命日だ。
だから何ってないんやけど、なんとなく思い出してみただけです。
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