最近,Rt.comに次のような記事が載った。それは「北の流れ(Nord Stream Ⅰ・Ⅱ)を破壊したのは米国である」というセイモア・ハーシュ氏の記事である。ハーシュ氏は伝説のジャーナリストであり金で買収されたりしないれっきとした記者であり,「ベトナムのソンミ村虐殺の隠蔽を暴露し、イラクのアブグレイブ刑務所で米軍が囚人を拷問したことを詳細に報告した伝説の調査記者」である。そのハーシュ氏が米国が犯人であると断定した記事をRt.comに投稿した。

 私はそれを全面否定しない。しかしNord Stream Ⅰ・Ⅱを破壊したのは「イギリスの特殊部隊」であると考える。その証拠は?イギリスが「幽霊の国」であるからである。私はイギリスに行ったことはあるが住んだわけではない。しかし小学校時代よりイギリスに注目してきたので,ほんの一部かもしれないが,イギリス観をもっている。それはエリザベス1世とキャプテン・ドレイクの関係に興味を覚えた私の体験をお話しすることでお判りいただけるものと思われる。

 キャプテン・ドレイクとは海賊である。独露の旗印を持つ海賊。喜望峰が発見されてから阿蘭陀・ポルトガルそしてスペインやイリスは世界の海に進出していった。そして「日の没するところなし」といわれた大英帝国を築いたのは海賊ドレイクであり,エリザベス1世である。しかも噂によれば,彼は彼女の恋人であったという。

 しかしなぜ海賊ドレイクが大英帝国建設に役立つ働きができたのか。それは彼の戦法にある。海賊が島影などから突然現れて船舶を攻撃すれば不意を衝かれて負けることが多かったに違いないからである。しかしそれはドレイクの初期の頃の話だった。すなわち各国の船団が海賊の突然の出現に慣れてくれば,各国の船団は用心するから効果はそれほど多くないというか成功する時より失敗することの方が多くなってきたはずである。敵も用心し始め海賊側の損害も多くなれば突然の不意打ちは効果を上げることは難しい。そこで海賊たちは偽旗作戦を展開した。つまり自国または友好国の国旗を掲げて敵船団に近い付いて近づいて突然旗を降ろしドクロ印の旗を掲げ大砲を放ったのである。かくして敵船であれ宝物や胡椒などを積んだ輸送船であれたちまち負けるか彼らの捕虜となった。しかしここに航海時代の規則が見て取れる。すなわちどこの国の船か分かるかように船の旗を掲げるべし。これが旗艦船の元になったようであるが,海賊ドレイクは各国の旗を掲げながら獲物を追跡して近づいたら海賊の旗を突然掲げるのである。安心させて攻撃に移る。偽旗作戦の初期の形態がここに見られる。

 源平合戦であれ関ヶ原の戦いであれ偽旗作戦を実行した武将の話は聞いたことがないが,例外はあったかもしれない。「やーやー.我こそは梶原の一騎北条時宗である・・・」といった戦い方は古くなった。大航海時代から「猫だまし」が流行りだした。そして時代は1980年,その伝統廃れず。毒殺事件を起こしたスクリパル親子は闇に隠れて世間に出て来ない。彼らはどこに消えたのであろうか。

 

 しかしそれだけではない。第二次大戦中,イギリスはドイツ連合軍に対抗するために,ユダヤ人やパレスティナ人の協力を得るべく2つの文書を発行した。一つの土地が2つの大きな勢力に割り当てられたのである。割り当てられた2つの勢力はそのことを知らずに勇敢に戦い,イギリスを勝利に導いた。それが現在のパレスティナ-イスラエル問題である。一つの土地を二つの勢力に割り振る作戦は「2枚舌」外交と呼ばれているが,誰が一番得をしたのか。イギリスであることは明々白日だが,当の2大勢力が将来的同士になるとは思わず戦い一国の勝利に貢献する姿を私はNord Stream Ⅰ・Ⅱ爆破事件にみる。

 Nord Stream Ⅰ・Ⅱ爆破犯人はその後ウクライナ軍(ワシントン・ポスト),次にロシア(西側メディア),ポーランドが「ヴォロディミル Z」,ポーランドとウクライナ両国(ドイツ連邦情報局の元長官アウグスト・ハニング),そしてついに米国(セイモア・ハーシュ)が出てきた。しかしあれほどロシア解体を願っているイギリスが出て来ないのはおかしい。当時のハリス首相はキエフまで行ってゼレンスキーに戦争続行を迫った事実を忘れてはいけない。つまり爆破行為にイギリスが関わらない事の方がおかしい。

 しかしこれまでの話は状況証拠に過ぎない。だが頭隠して尻隠さず。すなわち故加藤周一が言ったように,「イギリスは幽霊の国」である。表に出て来ない。足を見せない。すなわち幽霊。英訳では幽霊もお化けもGhost.

 一番記憶に残っているのはシリアの事例である。米軍がクルド地区方面に不法にも駐留して石油・食糧・水の窃盗を行っていることは事実だが,ISISやISILを支援してアサド大統領政府を倒そうとしているのは事実である。しかしシリア政府打倒に向け活動しているのは米軍だけではない。フランス・イギリス・その他の国々である。しかし仏英が表には出て来ないだけで隠れてテロリストやクルド人の一部を支援している。ウクライナも同じで英米波なども国籍を隠してテロ行為を支援している。ところがフランスはミンスク合意Ⅰ・Ⅱの締結国であるが英国は締結をしていない。この点が英仏の相違点である。

 ほかにも英仏の相違点はあるかもしれないがアメリカと組んでいるのは英国である。Rt.comの記事をもう一度引用すると「ロシアとドイツという2つの重要な権力中心地の間の経済統合と協力を阻止することは、米国と英国の何世紀にもわたる覇権的目標であった。諜報機関とつながりのあるシンクタンクであるランド研究所は、陸軍4年ごとの防衛見直し局の支援を受けて、ロシアを弱体化させ、過剰に拡大させる方法についての報告書を2019年に作成した。報告書は、ロシアの国境を不安定にし、ウクライナでモスクワを苦しめるほか、ロシアと西ヨーロッパとのエネルギー関係を断つという目標を概説した。最初のステップは、ノルドストリーム2の停止を含む」とあるようにRt.comは米国と英国を指示している。

 この文章からは英軍すなわちイギリス軍が爆破をやったとは書いてないが,フランスと組んでいるとも書いていない。もちろんメルケル首相が「ミンスク合意は時間稼ぎだった」と告白しているからフランスが後ろで関係したかもしれないが,ミンスク合意がたとい時間稼ぎだったとしても,その合意はプーチンによってウクライナ進軍の正当な口実となっている。この点で「デモクラシ-タイムス」の五野井教授や金子教授の立場を弱めるが,米英の「何世紀にもわたる覇権的目標がロシヤとドイツの経済統合と協力を阻止する」ことにあったとすれば,英国がNord Stream (Ⅰ・)Ⅱを爆破することに関与しないということは考えれられない。これが爆破国特定の理由の第一であり第二の理由はウクライナや米国やポーランドやロシヤが爆破犯人説として浮上してきたように誰がやったか分からないようにやるのが英国流であり,幽霊の国のやり方である。

 第三の理由はブチャの大虐殺の証言である。この虐殺に加わったチェコの兵士は裁判にかけられて英国諜報部の指導の下で事件に関係したと証言している。したがって得られた3つの,単なる状況証拠でない事実から英国が幽霊の国であり,誰がやったかを特定されないように事件を起こす国(特殊部隊)であることが判る。したがってNord Stream (Ⅰ・)Ⅱを爆破したのは英国つまりイギリスである。

 米国特殊部隊も関与したという疑いは捨て去ることはできないから犯人は,一歩譲って英国を中心にした英米特殊部隊によって引き起こされたと断定してよいだろう。