「くぅーん くぅーん」

あ 朝だ。ドアの向こうのめいちゃんが起こしに来てくれた。気配、めいちゃんの。


めいちゃんは、大きくて乳白色のつやつやな毛並み、めったにほえたりしない、僕の大好きな 犬だ。

この春 中学生になった僕は陸上大会で五番だった。

走るのが、苦手なんだ。

「めいちゃん おいで!」
神社まで走る。お腹すいてるけど走る。めいちゃんの方が 速い。あ こけた。

「くぅーん くぅーん」

鼻を僕に優しくくっつけてめいちゃんが まだ行けるよと 合図。

1ヶ月くらい 朝 めいちゃんと走っている。

体育の時間がきた。

僕は さっそうと走るめいちゃんの後ろ姿をイメージした。

めいちゃんの後ろでいいんだ。

結果は 四番だった。

帰って 僕は めいちゃんを ぎゅっと抱きしめた。

一緒に走ってくれてありがとう。いつも起こしてくれてありがとう。


めいちゃんは顔をペロペロとなめて 返事をしてくれる。

僕は 朝 めいちゃんと走るのを続けようと思う。