みんなで怠ける集団心理 | 斎藤社労士事務所

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代表のシャイとうさんが興味あることを記録しています。

バンク捲き線作業観察実験(ばんくまきせん・さぎょうかんさつ・じっけん)は、インフォーマル集団による作業量制限行為の存在・実態を明らかにしたことで有名な実験である。

 

これは、労働者たちは職場で独自の集団・文化を作り、それが企業のフォーマルなものと同様に有効性を持っているという考えに立脚したものであった。

 

この実験の直接的きっかけとなったのは、実際の作業現場において集団的作業量制限行為が確認されていたことだった。
 

ホーソン実験の関係者たちにとっては、そのような制限行為を作り出す集団がどのように形成され、どのような機能を果たしているのかといった、その実態の解明が重要な課題とされ、実際の作業現場を観察することが必要とされた。

 

この実験の大きな特徴は、これまでの実験のように何らかの操作的実験措置を行い、その結果をみるというものではなく、あくまでも観察に徹することでありました。

 

バンク捲き線作業観察実験は、捲き線作業員(コネクター作業員・セレクター作業員)、溶接作業員、検査作業員の3種の作業員いた。

 

捲き線作業員と溶接作業員は同じ製造部門の者たちであった。
しかし、検査作業員は検査部門の者であり、捲き線作業員、溶接作業員の作業を検査するために派遣されている状態であった。加えて、検査作業員は、その検査作業において定められた一定の基準に基づいて検査するだけではなく、自己の判断を加味することが許されていた。


つまり、検査作業員は、捲き線作業員、溶接作業員に対して非公式ではあるが権限を持った上位的な立場であると考えられた。

 

また捲き線作業員と溶接作業員の関係は、捲き線作業員を上位とする一種の主従関係にあった。

これは捲き線作業員が溶接作業員に仕事の交換をもちかけていたことに表れていた。つまり、この作業場の社会的地位は、検査作業員、捲き線作業員、溶接作業員の順になっていたのである。

 

実験開始直後、作業員たちは私語も少なく、観察者に対してもほとんど話しかけることなく熱心に作業を進めていたが、日が経つにつれ観察者との間の緊張関係が緩和され、雰囲気が和らいだことから、私語を始めたり、歌を歌うものまであらわれた。3週間目になると観察者は実験メンバーである作業員たちから無害の者という信頼を得ることができたのである。

 

ここで行われていた作業は、捲き線・溶接・検査の作業がセットで行われるものであった。一日の作業量は仕上品の数量(一日二個)を基準に決められることが慣例となっており、この数量を前提に自分の作業量を考えている者もいれば、最高熟練作業者の作業量を基準に定められた目標作業量を自身の作業量とする者もいた。

 

注目すべきことは、作業員が一時間ごとに班長に報告していた作業量と、観察者が実際に確認した作業量に違いがあったことである。


つまり、作業員たちは報告作業量を操作していたのである。

そして作業員たちは、多く作業したときの作業量を少ない作業量の時に上乗せするためにこのような行為を行っていたのであった。
しかし、こうした操作をすることによって、それぞれの報告された作業量が平準化され、その作業量にはほとんど変動がみられなかったのである。

 

なぜこのように作業量を平準化するように操作して報告する必要があったのだろうか。その答えは、作業員たちの日々の努力は精一杯のもので、さらに向上することはないということを組織的に示す、集団的作業量制限行為の結果であると考えられた。

 

 

つづく

 

 

参考:「メイヨー=レスリスバーガー」吉原正彦 編

 

 

  

 

 「ホーソン実験の研究」大橋昭一 竹林浩志 著