music from the planet waves音楽は、人の心を癒し、暖めるだけではなく、その曲を聴いた時代の音や色、香り、そして声を思い起こさせてくれる。
その人の胸に残る曲の数々は、その人の生きた歩みそのものだといえるかもしれない。
音楽とは、文字通り言葉ではない。
だからこそ、時に言葉よりも深く、鮮明に心の中に語りかけてくる。
今日もまた一歩、歩みを進めたあなたの人生のそばに、素敵な音楽があるように。
VOL.2 Elvis Costello [ Olivers Army]-俺に話をさせるなよ。一晩中だって喋っちまうぜー
はい。今回はエルヴィス・コステロです。
コステロといえば、一昔前に映画やドラマの主題歌で使われましたね。
なんとなく、渋めのバラードを歌うおじさんという印象をお持ちの方も多いんじゃないでしょうか。
とんでもない!コステロといえば、極上のメロディメーカー。そして反骨精神溢れる皮肉好きなパンク野郎なんです。
とにかく何も言わず、この映像を見てください。
どうです?
TUBEが酔っ払って曲を提供する相手間違えたんじゃないか思うような、明るくPOPな曲ですね。
これのどこがパンク野郎なんだと思ったあなた。ちょっとまってください。
これがコステロの真骨頂なのです。
では、何を歌っているのかを探っていきましょう。
まず、表題の「Olivers Army」とは、
清教徒革命で教科書にも載っている「オリバー・クロムウェル」の事。
そしてクロムウェルは、革命を名目に北アイルランドに英国軍隊を送り込み、今にいたるアイルランド紛争の原因を作った人でもあるのですね。
つまり、オリバーの軍隊という表題は=イギリス軍という事なんです。
どうですか?きな臭くなってきましたね。
そして歌詞はいうと、冒頭の歌詞が今回の引用した一節になります。
「話させるな」とは何のことでしょう?
「職業安定所に電話したよ。お前仕事ないんだろ?いい仕事があるんだよ」
おっと、なんだか詐欺師のような台詞。
いい仕事とは、後になるにつれて分かりますが、「軍隊」のことです。
つまり仕事のない若者に「軍隊に入らないか?」と誘っている曲なんですね。
「チェックポイント・チャリーで奴を見たよ」
「奴は笑っちゃいなかった」
「まあ、死の1マイルにいたら、笑えはしないよな」
チェックポイントチャーリーとは、東西ドイツを分断していたベルリンの壁に設けられていた国境検問所の事。
死の一マイルとは脱走者や亡命者を出さないために、1マイルの距離に3箇所も検問があったことからついた名称だそうです。
そんなところにいたら笑えなくて当然です。
「けど、そのむずむずする引き金を引けば、未亡人が増え、白人の二ガーが減っていく」
皮肉な言葉です。
白人の二ガーという解釈は様々あると思いますが、ニガーはかつて「黒人奴隷」につけた蔑称である事から「敵」あるいは「兵士」という意味でしょうか。
「ちょっとその気さえあれば、敵を倒せるんだぜ」と誘っているように見えますが、そのくせ実は、その若者こそを「白人のニガー」として戦場に駆り立てようとしてるんです。
「香港はわれわれのものだ
ロンドンをアラブ人でいっぱいだ
パレスチナだって行けるし、
中国の国境だって越えていけるぜ」
「だけど、危険はないよ。だってこれはプロの仕事だからね。
まあチャーチル首相の耳に届いたらどうなるかはしらないけど」
この曲が出た時は、香港はまだイギリス統治下にありました。
つまり「イギリスの経済に入りこむアラブ系を排除しよう。香港は中国なんかに渡さないぞ。さあ君も一緒にいこう」
といってるんですね。
しかも「ちょっとバカンス気分で戦争行って来ないか」というノリで、です。
しかし裏を返せば、これはイギリスのナショナリズムを扇動する「政府」に向けた皮肉なのです。
それにしても、どうしてコステロはこんな歌をつくったのでしょう。
ただのふざけ半分なら、ここまではできません。
それは、この曲が発表された1970年代後半。当為のイギリス政府は中等教育を終えたばかりの少年兵を前線に送り込んでいたという事実があったからです。そして多くの血が流れました。
この曲は、そんな年端もいかない少年を騙すようにして戦争に送り込む大人(政府)に対する強烈な怒りをこめたコステロ流の抗議なのです。
ここでもう一度pvの内容を思い返してください。
リゾートのような海岸、耳ざわりのよいPOPな曲調。pvに出てくるアジアの格好やアラブの格好をしたなぞの男たち。
それが何をしめしているか分かってきたはずです。
ある意味ジョン・レノンより、はるかに過激で、勇気ある告発です。
発表当時、この曲はイギリスでは放送禁止状態だったようです。
聞いた話では、今でもイギリスが戦争状態になると放送禁止になるのだとか。
コステロの反骨精神は、いまでも確実に影響を与えています。
影響を与えるという意味では、PVのコステロの格好を、どこかで見たと感じた方もいるはず。
そう。ミスチルが「シーソーゲーム」だったか「everbody's goes」の時に同じような格好をしていましたね。
あれは、コステロを意識してのことだと思います。
当時、洋楽好きの間では「あれはコステロのパロディだ」というのが暗黙の了解でした。
ベスト・オブ・エルヴィス・コステロ/エルヴィス・コステロ

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