毎日ほぼ必ず目にする物の中にお札がある。 お札といえば、こ

このところしばらく新札の発行がなく、マンネリ化状態といえる。 

現在の福沢諭吉、樋口一葉、野口英世のメンバーもすっかり社会

に溶け込んで、発行当初の違和感はまったくない。 そう思っていた

ところあることに気づいた。 たしかもう一種類のお札があったはず

だと。 そうだ二千円札があったではないか。 数年前までは郵便局

でたまに受け取ることがあったが、今ではほとんど巷で目にすること

がなくなってしまった。 もう大抵の人はその存在すら忘れていると

言っても過言ではないだろう。 紫式部もさぞ悲しみにくれているの

ではないか。 

 振り返ってみると、故小渕元首相の発案で華々しく?デビューした

のが、確か平成8年1月だったはず。 発行されてすぐ郵便局で20

枚両替して、翌日から沖縄へ旅行したのを覚えている。 那覇空港

へ着いて、いろいろなところで使ってみて、その反応を見るのが面白

かったものだった。 さすがに受け取りを拒否されたことはなかった

が、みんな初めて目にする二千円札を興味深げに手に取ったり覗き

込んだりしていたものだ。 ところがその後普及するどころか、だん

だん邪魔者扱いされるがごとく、いつのまにか市場から姿を消してし

まった。 たしかに日本では二千円単位というのに馴染みがないか

らだと言われもした。 

 しかし最大の要因は、やはり自動販売機が受け付けなかったとい

うことに尽きよう。 これほどまでに日本では自動販売機の普及が

顕著で、他国に類を見ないであろう。 世界中を調べたわけではな

いので、正確にはわからないが、たぶん世界一ではないかと思って

いる。 旅行好きの私は全国津々浦々巡っているが、どんな田舎へ

行っても目にしないことはまずない。 近頃では様々なアイデアに

より、多種多様のグッズが売られている。 二千円札の話が自動販

売機の方へ行きそうなので、閑話休題。

 いま街中で二千円札のデザインを訊いて答えられる人は、一体ど

のくらいいるのだろう。 まあよくて10パーセントくらいだろう。 これ

ほどまでに冷遇されている二千円札にはたして将来はあるのか?

そう思いながら自宅の引き出しで眠っている二千円札を取り出して

みた。 久しぶりの対面で、なんとも言えぬ懐かしさが蘇ってくる。

今度ためしにどこかで使ってみようか。 もしかして「あっ!これ何

ですか?」「海外の紙幣は使えません」なんてことに・・・・・。 まあ

言われるわけないか。 いつの日にか脚光を浴びる時が来ること

を願って、再び引き出しの中で眠りに就いた紫式部であった。