子どもの頃の私には、○角屋は、「狭くて古めかしくて、独特の匂いがするが、ラーメンはとてつもなく美味い店」という印象だった。

その頃の店内はまだ今のように改装するはるか昔のことで、店内はかなり手狭で、薄暗く、壁は油で薄茶色に変色し、お世辞にも綺麗な店ではなかった。
もし当時某TV番組の「きたなシュラン」があったら、おそらく取材を受けていたかも知れない。

壁に張られた薄汚れた手書きのメニュー、今でもあるが、「男はつらいよ」のポスター。そして、これも今も変わらない光景だが、店の奥のカウンター横にある小座敷では、昼間から常連さんと思しき男性客が葡萄酒を酌み交わしながら、賑やかに談笑している。

ちなみにこの「葡萄酒」だが、つまりは赤ワインのことで、山梨ではよく見かける一升瓶に入っているタイプだ。そして、客の目の前でグラス(ワイングラスなどという洒落たものではなく瓶ビールをつぐ小さめのコップ)になみなみと注いでくれる。
ちなみに、日本酒のように受け皿の上にグラスを置き、少しこぼしてくれるという、にくいサービス付きである。

小学生の私はまだ知らなかったが、今思えば“老舗”という表現がまさにぴったりの名店である。
当時のメニューは今とまったく変わらない。
ラインナップはまさにシンプル。抜き書きしてみるとこのようなものだ。

○しょうゆラーメン
○にくめし
○しょうにくめし
○ラーメンとしょうにくめしのセット
○ブドウ酒
○ビール
○日本酒
○角屋は、大手コンビニエンスストアとのタイアップ商品も売り出され、もはや、山梨ではかなりの知名度があるラーメン屋と言える。だが、私がこの店と出会った頃は、まだまだここまでは知られてはいなかった。

父に「ここのラーメンは美味いよ」と言われ、最初にこの店を訪れたのは、私が小学生の頃だったと思う。

この店のある石和は私の住む町からはかなり離れていたが、おそらく年に数回は行っていた。

今思えば、我が家は、外食といえば、ラーメン屋で、祖父母、両親、弟の家族全員で月に最低1回は必ず出かけていた。

第2回山梨グルメ日記で紹介するお店は、山梨を代表する老舗「ラーメン屋さん」。

ラーメンといえば、もはや国民食といってもいい程、日本人の誰もが馴染みのある食べ物。どこに行ってもラーメン屋さんに行き当たる。

しかし、それだけに、美味しさのレベルには開きがある。
なおかつ、人によって嗜好に大きな幅がある。例えば、背油たっぷりの豚骨ラーメンが好きな人もあれば、さっぱり塩ラーメンしか食べないといった人もいる。

また、ラーメンには「つけ麺」「チャーシューメン」「タンメン」「サンマーメン」「油そば」などその種類もバラエティーに富む。

また、ラーメンには地域性もかなりある。「札幌ラーメン」、「喜多方ラーメン」、「東京ラーメン」、「和歌山ラーメン」、「九州ラーメン」といった、○○ラーメンと地域名の入ったいわゆる「ご当地ラーメン」は無数にある。

このような多様性に富む食べ物も他にはそう見当たらない。それだけ、日本人に愛されていると言ってよい。

さて、能書きはこのくらいにして、今回のお店を紹介しよう。

今回のお店は、笛吹市にある【○角屋】さんです。