会計の使い込みが発覚した週の日曜日、義実家へ行くことになった。
さすがに子どもたちを一緒に連れていくのは良くないと思い、先に私の実家へ行って子どもたちを預けることに。
夫に、私の実家にも今回の件は伝えてあるということを告げた。
子どもたちを預けるだけと思っていた夫は、少し緊張した面持ちになり、
『・・・ちゃんと謝るよ。』
と言った。
「ばーば!ばーば!」と子どもたちが、私の母を取り囲み、遊んでもらっている内に、夫と私は父と向き合った。
父の前では、さすがに貝にならない夫。
すぐに、
『とんでもないことをして妻や子どもたちを悲しませてしまい、すみませんでした。』
と言って、頭を下げた。
父は、夫のその姿を少しの間見つめた後、ゆっくりと口を開いた。
「結婚の挨拶に来た時、しっかり頼むぞって伝えたはずやったけどな。」
「こういうことをすると、もう自分1人の問題ではすまん。家族にも辛い思いをさせてしまう。」
「夫であり、父親であるという自覚をしっかり持ちなさい。」
そして最後に、
「娘には、いつでも帰ってきなさいと伝えてあるからな。」
と告げた。
夫は深く項垂れ、再度謝罪をした。
結婚挨拶の時の嬉しそうな父の顔を思い出し、胸が痛んだ。
お父さん、お母さん、安心して嫁に出したはずなのに、心配させて、悲しませてしまってごめんなさい。
時間も無かったし、これ以上両親の顔を見るのがいたたまれなかったこともあり、義実家へ行くことを伝えて席を立とうとすると、父が、
「これ、受け取りなさい。」
と、そっと封筒を差し出してきた。
私「え?」
少し厚みのある封筒。
おそらくお金だ。
父「これは、借金を返すためのものじゃない。」
父「娘と孫が不憫な生活をしないようにするためのものやから。」
私「いや、お父さん、いいよ。大丈夫!」
父「お金のことで3人が我慢せないかん生活をしてほしくない。」
私「でも・・・・・」
父「お父さん、年金入ってきて少しお金持ちになったからな。」
父「受け取りなさい。」
そういって父は私の手に封筒を握らせた。
孫が生まれてから、自分のことを「じーじ」と言うようになった父から、久しぶりに「お父さん」という言葉を聞いた。
小さいころ、何度も「お父さんと結婚する!」「お父さんのような人と結婚する!」と言っていた私。
一体どこで間違えたのかな。
車の中で父から渡された封筒を確認すると、現金と共に手紙が入っており、そこには、
40万円入っています。
不便な暮らしにならないように、生活の足しにしてください。
帰ってくる場所はここにもあります。
等と記載されていた。
私が最初、夫が使い込んだ額を40万円と伝えていたから、その金額を入れてくれていたんだろう。
両親の優しさに号泣しながら、義実家へ向かった。