【無料で読めます】戸口に残る母の息
返事をしてはいけない。
その声が、死んだ母でも。
牧瀬直人が引っ越した古い家では、午前二時十三分になると、玄関の近くで三度、音がする。
最初は、古い家だからだと思っていた。
侵入経路を塞ぎ、記録を残し、人間の仕業を疑うほど、説明できるものだけが消えていき、説明のつかないものだけが家に残っていく。
やがて聞こえ始めたのは、死んだ母・澄江に似た声だった。
怖いから確かめたくない。
それでも、本当に母なら確かめたい。
家の異変を追うほど、直人の中に残っていた母の記憶そのものが、少しずつ別のものに侵されていく。
あの声は、本当に母なのか。
それとも――
直人が「母だと思っているもの」を、何かが覚えているだけなのか。
午前二時十三分。
玄関の近くで、三度の音がする。
そのあとに名前を呼ばれても――
返事をしてはいけない。
日常のすぐ隣から、少しずつ逃げ場を奪っていく。
住宅怪異と喪失を描いた現代心理ホラー。
『戸口に残る母の息』
著:孤夢知(こむち)
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▼作品はこちら
https://kakuyomu.jp/works/11054822661955435807
「少しずつおかしくなっていく家」
「確かだったはずの記憶が信用できなくなる恐怖」
そんな物語が好きな方に読んでもらえたら嬉しいです。
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