「 汲み取るには
相手が水を出していないと無理 」
その一言を聞いた瞬間
体のどこかで何かが崩れた
私は ずっと
相手の言葉を汲み取ろうとしてきた
辻褄が合わなくても
前提が変わっても
説明が足りなくても
「 私の理解が足りないんだ 」
そうやって
自分のほうを直してきた
でも
もし蛇口がひねられて
いなかったとしたら?
水が出ていないのに
コップを当て続けていたとしたら?
出ない水を
「 私の汲み方が悪い 」
と 50年間も 思っていたとしたら
ガクガクした
怖いというより
爆発のあとみたいだった
煙に包まれて
何がなんだか分からない
いい子
だったのかもしれない
でもそれは
優しさだったのか
生き延びるための技術だったのか
まだ整理はつかない
ただ ひとつだけ わかるのは
私はずっと
自分を責めることで
場を保ってきたということ
そして今
その前提が揺れている
煙の中に立っている
でも多分これは 壊れた のではない
圧が抜けた音
だったのだと思う