週に一回、日曜版の小説は本当に楽しみ。
今回の「ひそやかな花園」は第一回目からつまらないと思ったことが一回もなかった。
「人工授精」を、それで生まれた子供の側から描く、今までにない、時代が生んだ題材だ。
幼いとき、毎年、夏の家に親に連れられて集った、同じクリニックで生を受けた子供たちの物語。
ある時、ぷつっと断絶し、全員の心の中にずっとひっかかっていた場所が、だんだん明らかにされる。親が売ったその別荘を買い戻したのは弾・・行くこともなかったのに・・

それぞれの子供たちが、悩み、苦しみながら、偶然かあるいは必然か・・・再び出会えた。
そして、今朝はこの家に、樹里と紀子が来た。
紀子は離婚を決めて幼子を連れて・・・

二人が談笑する様子を眺める弾は

「二人は笑い合っている。弾には笑うような話題には思えないのに、心底たのしそうに互いをつつき合って、笑っている。もしかして、今この瞬間を見るために、この瞬間に立ち会うために、いや、この瞬間を作り出すために、ここを買い戻したのではなかったかと、弾はちらりと思う」

静かな暖かさが胸に広がった。