「うちの子も、最近は毎日いろんなことができるようになってきて、大変なことも多いですけど、やっぱりかわいいんですよね」
山本さんは、優しい笑顔でお子さんの話をしてくれました。
きっと、何気ない日常の話をしてくれただけ。
それなのに、わたしは笑顔でうなずきながら、心の中では別のことを考えていました。
いいな……。
子供がいて。
帰る場所に家族がいて。
毎日の中に小さな幸せがあって。
わたしだって、そんな未来が欲しかった。
手に入ると思ってた。
佐藤さんと一緒に、家族になりたかった。
いつか子供ができたら、どんな顔をするんだろう。一緒に子育てをして、家族で出かけて、何気ない毎日を過ごして。
そんな未来を、勝手に想像していたこともありました。
でも、今のわたしには何もありません。
そう思った瞬間、山本さんへの羨ましさが、胸の中にじわじわと広がっていきました。
どうして、わたしじゃないんだろう。
どうして、わたしはまだこんなところで立ち止まっているんだろう。
山本さんは何も悪くない。
なのに…
「……ななさん?」
気づけば、わたしは黙り込んでいました。
「あ、ごめんなさい、ちょっと考えちゃって」
慌てて笑顔をつくると、山本さんは優しく言いました。
「無理して笑わなくても大丈夫だよ」
その言葉に、今にも涙がこぼれそうになりました。
次回へ続きます。
https://line.me/S/sticker/36031053/?lang=ja&utm_source=gnsh_stickerDetail
