そして、その日の夜、仕事から帰ってきたわたしは、またスマホを手に取りました。
佐藤さんとのトーク画面を開く。
過去のLINEを、上から少しずつ読み返しました。
付き合い始めた頃。
会う約束をした日。
くだらないことで笑ったやり取り。
わたしが落ち込んでいたときに送ってくれた言葉。妊活のことで不安になっていたときに
『一緒に考えよう』
と言ってくれたこと。
そして
『無理しないでね』
何度も言ってくれたこと。
画面をスクロールしながら、わたしは思いました。佐藤さんは、ずっと優しかった。
少なくとも、わたしが知っている佐藤さんは。
だからこそ昨日、あんなに苦しそうな声で別れを告げたことが、頭から離れませんでした。
「佐藤さんは……いつからこんなに苦しかったんだろう」
付き合っている間わたしは、佐藤さんが無理をしていることに気づけていたんだろうか。
「大丈夫?」
そう聞いたことはあった。
でも本当に
「大丈夫じゃない」
と言えるような聞き方をしていただろうか。
佐藤さんが
「大丈夫」
と言ったらわたしは、その言葉を信じて終わっていたんじゃないだろうか。
そんなことを考えているうちに別のことにも気づきました。
わたしは佐藤さんに
「無理しないでね」
って何度言われただろう。
でも、佐藤さん自身が苦しんでいたときわたしは、どれだけその言葉を返してあげられていただろう。
次回へ続きます。