布団に入っても、当たり前みたいに眠れませんでした。

目を閉じると、佐藤さんの声が聞こえてくる。

『ななさんのことを嫌いになったわけじゃない』『今でも大切だと思ってる』

『ななさんには幸せになってほしい』

そして最後の言葉。

『……別れたい』

何度も何度も頭の中で繰り返されました。


「嫌いじゃないなら……」

小さな声が漏れました。

「どうして別れなきゃいけないの?」

自分でも答えは分かっていました。


佐藤さんは、今の自分ではわたしを幸せにできないと思った。

わたしに我慢をさせるくらいなら、離れたほうがいいと思った。

それも、きっと佐藤さんなりの優しさだった。

でも、優しいからこそ、余計に苦しかった。


嫌われたわけじゃない。

誰か他の人ができたわけでもない。

喧嘩をしたわけでもない。

何か大きな裏切りがあったわけでもない。

それなのに別れることになった。

それが、わたしには一番苦しかったのかもしれません。


次回へ続きます。