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「だから……」
佐藤さんが言葉を止めました。
長い沈黙。
その沈黙の間に、わたしは分かってしまいました。
「……別れたい」
その言葉が、静かに耳に届きました。
一瞬。何も考えられなくなりました。
さっきまで聞こえていた佐藤さんの声が、遠くなったような気がしました。
「……そっか」やっと出てきた言葉は、それだけでした。
本当は違う。
嫌だと言いたかった。
別れたくないと言いたかった。
待つから、と言いたかった。
一緒に頑張ろうって言いたかった。
でも、電話の向こうにいる佐藤さんが、今どれだけ苦しみながらこの言葉を口にしているのか、それを知ってしまったから、簡単に引き止めることができませんでした。
「ごめんね、ななさん」
「……謝らないで」
「でも……」
「謝らないでよ」
涙で声が震えました。
「佐藤さんが悪いわけじゃないよ」
そう言いながら、自分に言い聞かせているような気がしました。
佐藤さんは、何も言いませんでした。
ただ、電話の向こうで静かに息をしていました。
次回へ続きます。
