「……そんなことがあったんだ」

知らなかった。

何も知らなかった。

わたしが知っている佐藤さんは、今の佐藤さんだけ。


その前にどんな時間を過ごしてきたのか。

どんなことで苦しんできたのか。

どんな思いでそこから立ち上がったのか。

わたしは何も知りませんでした。


『一回そうなると、治ったって思っても、完全になくなるわけじゃないんじゃないかって思うことがある。

落ち着いてる時は普通に生活できる。

仕事もできるし、人と笑って話すこともできる。

でも、たまに急に落ちてくる時がある。

だから今も、必要な時は心療内科に行ってる。

薬のお世話になることもある』

その一つ一つの言葉を、わたしはゆっくり読みました。


そして
次に届いたLINEを見た瞬間、息が止まりました。
『実は、自殺未遂をしたこともある』
「……」
声が出ませんでした。


自殺未遂·····。

元彼の裕太がそれをした時のことが思い返されます。

スマホを持つ手から力が抜けそうになります。
何度も画面を見ました。
見間違いじゃない。
確かに、そう書いてある。
佐藤さんが。
そんなことを。
過去に。

「……佐藤さん」
胸の奥がズキッと痛みました。
怖かった。
佐藤さんの過去を知ることが怖いというより。
その頃の佐藤さんが、どれだけ苦しかったのかを想像することが怖かった。


次回へ続きます。