「もう……考えすぎだよ」
自分に言い聞かせます。
たまたま忙しいだけかもしれない。
スマホを家に置いたまま出掛けているだけかもしれない。
充電が切れているのかもしれない。
理由なんて、いくらでも考えられます。
それなのに人って不思議です。
何も分からない時間が長くなるほど、頭の中で勝手に物語を作ってしまう。
そして、その物語は決まって一番悪い結末へ向かっていきます。
わたしはスマホをテーブルへ置きました。
「もう少し待とう」
そう思って、スマホから離れます。でも数分もしないうちに、また気になってしまう。
画面を見る。
未読。
「……まだか」
時計を見る。
20時17分。
昼間に送ったLINEが、まだ読まれていない。
いつもなら何とも思わない数時間が、今日は異様に長く感じました。
そして、ふと思ったんです。
わたしはつい数日前、人との縁について考えていた。
美咲さんや真由さんとの縁。
出会った人と、ずっと繋がっていられるわけじゃない。
人との関係は、いつか形を変えることもある。
そんなことを考えていたばかりでした。
そして今わたしは、自分にとって一番大切な人とのLINEが既読にならないだけで、こんなにも不安になっている。
「……わたし、佐藤さんのこと……」
そこまで考えて、言葉を止めました。
怖かったんです。
自分がどれだけ佐藤さんとの繋がりを大切にしているのか。
改めて思い知らされるのが。
そして、この時のわたしは、まだ知りませんでした。
この
「既読がつかない」
という小さな違和感がこれまで当たり前だと思っていた佐藤さんとの関係について、わたし自身が考え直すきっかけになるなんて。
わたしはもう一度スマホを手に取りました。
そして、佐藤さんとのトーク画面を開きます。
未読のままの、たった一つのメッセージ。
その画面を見つめながら、わたしは静かに呟きました。
「……佐藤さん、何してるの?」
返事はありませんでした。
ただ、画面にはずっと、
『未読』
の文字だけが残っていたのでした。
次回へ続きます。
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