すぐには既読が付きません。

きっとまだ電車の中なんだろうな。

そう思って、スマホをテーブルへ置きました。


着替える気にもなれず、そのままソファへ座ります。

今日一日のことを思い返しているうちに、どっと疲れが押し寄せてきました。

朝から色々あって、でも最後に佐藤さんに会えると思っていた。

その最後の予定だけが、ぽんと抜け落ちてしまった。

「会いたかったな……」

思わず口からこぼれます。


ヴヴッ。

しばらくしてスマホが震えました。

慌てて手に取ります。

佐藤さんからでした。

『家着いたんだね、おかえり』

『うん、ただいま』

『よかった、無事着いて』

それだけなのに、胸が少し温かくなりました。


『佐藤さんは?』

送ってから、しばらく待ちます。

すると、

『まだ電車の中』

『えっ、まだなの?』

『うん、前の電車詰まってるとかでノロノロ運転だからなかなか進まない』

時計を見ると、わたしが家へ着いてから、もうかなり時間が経っています。

「一時間……」

思わず時計を見つめました。

わたしが家に着いてから、もう一時間。

それだけ長い時間、佐藤さんは電車に乗ったまま帰っていたんだ。


『大丈夫?』

『大丈夫だよ』

『疲れたでしょ』

『ちょっと疲れた笑』

最後に付いている「笑」を見て、なんだか佐藤さんらしいなと思いました。


本当は疲れているはずなのに。

きっとわたしに心配をかけないようにしている。

『ごめんね』

送信してから、すぐに後悔しました。

また謝ってしまった。

何も悪くないのに。


すると、少しして返事が来ました。

『なんで謝るの?』

『だって今日会えなかったから』

『ななさんのせいじゃないでしょ』

『でも……』

『俺も会いたかったよ』

その文字を見た瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられました。

会いたかった。

また言ってくれた「会いたかった」って。


どんなに大袈裟に愛を囁かれるより、シンプルなその言葉がよっぽど嬉しい。

『わたしも会いたかった』

送信。