ちょうどその時、佐藤さんからLINEが届きました。『ごめん、今まだ電話の中だけど止まってる』

わたしはすぐに返信しました。

『こっちも今アナウンス流れたよ』

すると、すぐに返事が来ます。

『運転再開の目処、まだ立ってないみたい』

「そんな……」

思わず小さな声が漏れました。


さっきまで、もうすぐ会えると思っていたのに。

ほんの数分前まで、佐藤さんの顔を見られることを楽しみにしていたのに。

突然、その予定が遠ざかっていきます。


駅員さんの周りには、状況を確認しようとする人たちが集まり始めていました。

「いつ頃再開しますか?」

「申し訳ありません、現在確認中です」

そんなやり取りが聞こえてきます。


スマホを見ると、運行情報にも

『運転再開の見込みは立っておりません』

と表示されています。


その文字を見つめながら、わたしは唇を噛みました。

会いたかった。

今日、会いたかった。

昨日の妊娠検査薬の結果を見て泣いたから。

今朝、生理が来てまた泣いたから。

仕事中も何度も泣きそうになったから。


だから佐藤さんに会って、少しだけ安心したかったんです。

話を聞いてほしかった。

隣にいてほしかった。

それだけでした。


しばらくすると、佐藤さんから電話がかかってきました。 

電話の向こう側がガヤガヤと騒がしいです。

「もしもし?」 

「ななさん、ごめん、電車少し動いて隣りの駅まで行けてホームに降りられたんだ」

「そうなんだ、ちょっと良かった、佐藤さんのせいじゃないよ」 

「今、駅員さんに聞いたんだけど、まだ再開の目処が立ってないみたい」

 「そっか……」 

「そっちは大丈夫?」

「うん。わたしは大丈夫」 


そう答えながら、自分でも分かっていました。

 大丈夫じゃない。 

会いたかった。

 その気持ちは、隠しようがありませんでした。 

「会いたかった」

その言葉に、胸がきゅっと締めつけられます。
「……うん」 

「今日会えると思ってた」

「わたしも」

 電話の向こうで、少しだけ沈黙がありました。