待ち合わせ場所へ向かいながら、私は何度もスマホの画面を確認していました。

佐藤さんから届いた

『今日会える?』

という短いLINE。

何度見ても胸がざわつきます。


会いたい。

その気持ちは、ずっとありました。


昨日、二人で妊娠検査薬を見て、一本線を確認して。

私は泣いた。

佐藤さんもきっと、すごく悲しかった。

そして今朝、生理が来た。

「今回は駄目だったんだ」


駅のコンコースを歩きながら、私は深く息を吐きます。

「大丈夫」

小さく呟きました。


今日一日、仕事もちゃんと頑張った。

朝から店長が休んで、近藤さんと二人で忙しい店を回して。

笑顔でお客様対応をして。

途中で泣きそうになったけれど、それもなんとか堪えた。


だから、もう少しだけ頑張ればいい。

佐藤さんに会ったら、きっと大丈夫。

そう思おうとしました。

でも、本当は怖かったんです。


顔を見た瞬間に泣いてしまったらどうしよう。

昨日のことを聞いて、佐藤さんを困らせたらどうしよう。

「また頑張ろう」

と言われたら、今度は何を頑張ればいいのか分からなくなったらどうしよう。

そんなことを考えながら、私は改札前まで来ました。

待ち合わせ場所は、改札を出たところ。

人の流れを避けながら、少し離れた場所に立ちます。


スマホを見ると、佐藤さんから新しいメッセージが届いていました。

『あと五分くらいで着くよ』

「……そっか」

胸がドクンと鳴ります。


あと少し。

あと少しで会う。

何から話そう。

そう思った時でした。


駅構内に、少しざわついた空気が流れ始めました。最初は、何かあったのかなと思っただけでした。

でも、周囲の人たちが一斉にスマホを見始めます。駅員さんも何人か慌ただしく動いています。


 そして、構内アナウンスが流れました。

 『お客様にお知らせいたします

現在、○○線は設備点検の影響により

運転を見合わせております』 


「……え?」思わず顔を上げました。 

運転見合わせ。 

その言葉が耳に入った瞬間、胸の奥がざわつきます。